「日本のドラマで日本語を覚えた」辛い別れを乗り越えて2店舗持つに至った蘇州大餛飩店オーナー<越境厨師の肖像>

新たな挑戦は、東京への新店舗開業

 微信(Wechat)のコミュニティを通し、中国人客を中心に5色ワンタンの美味しい噂は近隣にとどまらず広域に拡大していった。 「たくさんの人が小手指の店に関心を持ったり、来てくれるようになって、より多くの人々に故郷蘇州の味を伝えたい、同郷の人々に懐かしんでほしいという気持ちが強くなったんです。そんな中、新しい挑戦をしたいという気持ちが強くなってきました」  小手指の店舗が軌道に乗ってきて、李さんにとって新たな挑戦が始まった。  東京へ新店舗を出す! そう決めてから1年間、小手指の店舗を回しながら、条件のいい物件を探し回ったという。  およそ1年間探した末に決まった新天地は、大久保に決まった。駅からも近くアクセス良好。  10月7日にめでたくオープンを果たしたばかりだ。
大久保店「蘇園餛飩」入り口

エントランスの看板や扉はすべて蘇州で調達した

 エントランス・看板・店内の水郷風景の壁紙は全て蘇州にて調達。箸は『蘇園餛飩』の刻字入り。細部にもこだわりがある。  再利用の空き瓶を活かした小さな花飾りは李さんのアイデア。卓上にさりげなく華やかさをという心配りだ。  オープン日、李さんは蘇州で縫製されたチャイナドレスで華やかに接客した。
蘇園餛飩オーナーの李文娟さん

グランドオープン初日、チャイナドレスでお客さんを迎えた蘇園餛飩オーナーの李文娟さん

挑戦することによって見えてくる景色がある

 故郷・蘇州の食文化だけではない。日本で学んだ製菓技術もここで活かすべく、他の中国料理店ではないようなケーキも揃えているのが李さんらしさだ。
2色の芋ペースト入りミルクティ

2色の芋ペースト入りミルクティ

野菜シフォンケーキ

ふわふわのシフォンケーキ

 ケーキは、フワッフワな野菜のシフォンケーキやとろける濃厚さのチョコレートケーキなどが、入り口そばのショーケースに並ぶ。  流行りのタピオカミルクティー(黑糖珍珠奶茶、通称は脏脏奶茶)も揃えている。さらには、グランドオープン直後で忙しいはずなのに、新商品の「2色の芋ペースト入りミルクティー(双色芋泥奶茶)をもデビューさせ、疲れを感じさせぬ勢いを見せる。  食事に、おやつに、ワンタンを。  食後やカフェタイムに、ケーキやミルクティーを。  彼女が育った中国のこと、そして日本に来てからの生活。そこから出てきた「夢」の結晶と言えるような店舗なのだ。 「挑戦することによって見えてくる景色がある」  李さんが、自己紹介として添えている言葉だ。  この言葉を常に胸に、李さんは歩みを止めることなく進み続ける。  蘇州大餛飩を挑戦しに食べに行ってみると、初めて食すワンタンの世界の扉が開き、新たに見えてくる景色と出合えるかもしれない。 <取材・文・撮影/愛吃(アイチー)>
あいちー●Twitter ID:@aichi_chuka。大陸を感じることができるところを特に愛す。 思い立ったら弾丸構わず全国・中国・他の国…あちこちすっ飛び食べ歩く。自身のブログ、「アイチーの、中華悠游記。」を経て、食通の厳選グルメキュレーションマガジン「メシコレ」キュレーター、Rettyグルメニュース連載「旅する中華」を経て、現在は、中華料理関連のあれこれ(監修・コーディネイター・アドバイザーなど)で活躍中。中国各地方の特色ある料理を楽しむ『中華地方菜研究会~旅するように中華を食べ歩こう』主宰でもある
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今回紹介した李さんのお店はこちらの2店

◎小手指「カフェダイニング 蘇(スー)
埼玉県所沢市小手指町1-15-11 アゼリア5 1階
04-2008-1188
営業時間 11:00-22:00

◎大久保「蘇園餛飩
東京都新宿区北新宿1-7-20 プロスペリタ新宿102
03-5330-1808
営業時間 11:00-22:00
(今後変更の可能性あり)