非行少年たちを肯定し、地域の犯罪防止や清掃活動を担わせる
三浦一広所長
もう1人の優秀賞受賞者は、鹿児島県奄美市のNPO、奄美青少年支援センター「ゆずり葉の郷」の三浦一広所長だ。
少年非行の元凶の多くは、家庭環境(両親の離婚やDV)や地域社会の崩壊。ここから多くの子どもが、非行、不登校、シンナー依存などになり、居場所がなく生きている。
三浦所長は「おせっかいおじさん」として彼らの相談に応じ、彼らの「自立・共生」を目指す「ゆずり葉の郷」を2001年に設立。非行少年たちを排除するのではなく、「奄美市青少年警護隊」として地域の犯罪防止のためのパトロールや清掃活動を担わせた。
この警護隊計画に
「ワルがつるむと暴走族になる」と、地元警察は大反対したという。だが、三浦所長はこれを敢行した。特に、札付きのワルに隊長職を任せると、みるみる心を開いて任務に勤しみ、警察がマークしていた非行地域が安全地域へと変貌した。
「彼らの共通点は、小さいときから誰にも認められず、励まされなかったこと。だから
彼らを肯定し、ほめれば絶対に更生します」
ある中学校の番長は、三浦所長に存在を肯定されて2代目警護隊長を務めた。ある日、アパートの5階から飛び降り自殺を図った中学生女子を、走って下でキャッチして助けた。
その衝撃で彼は大腿骨骨折をしたという。三浦所長はこれを誇りに思っている。三浦所長は、2010年には、家庭崩壊で居場所をなくした若者を受け入れる青少年自立援助ホーム「さざ波の家・奄美」も開設している。
審査委員の一人、元警察官の飛松五男氏
3人の受賞者に共通しているのは「
人は絶対に更生する」との強い信念だ。受賞にあたっては6人の審査委員が審査をするのだが、その一人である飛松五男(いつお)氏(元警察官)はこう述べた。
「僕は日本でいちばん罪人を捕まえたと思います。その人たちは出所日には僕のところに来て、一緒にご飯を食べて『おやじさん、今度こそ絶対にやり直します』と誓うのですが、すぐにまた捕まってしまう人も多かった。一人でもいいから、出所後の彼らと向き合う人がいれば、違う結果になったと思います。暴力は悪いですよ。でも、彼らはいい心はもっている。それを信じてあげたい」
今回、受賞した小澤社長、副島社長、三浦所長はそれを実践している人たちだ。特に、副島社長と三浦所長には改めて取材をしたい。そう思った。
<文・写真/樫田秀樹>