Room to Healでは毎週難民のメンバーが順番にメインシェフとなるため、各国料理が食べられる。この日のメニューはイラン風ライス
採用後に言われたのが、「犯罪経歴証明書」をとってほしい、ということであった。つまり、「難民のメンバーを守るために、あなたが犯罪者ではない証明をしてほしい」ということである。
イギリスでは、特に子供や老人といった「弱い」存在を守るために、そのような人々と関わる人が証明書を取得するというのは割と普通であるそうだ。日本で筆者がいくつかの団体でボランティアをした際、取得をするよう言われたことは今まで一度もなかった。
そして、犯罪経歴証明書を取得するまでは、難民と2人きりになることは許されない。証明書の取得を待たず、まずは団体の概要や、仕事内容、難民のメンバーと連絡先を交換することの禁止などのさまざまなルールを含めたトレーニングセッションを受ける。
そして秘密保持などの約束が書かれたいくつかの誓約書にサインをした後、ようやくボランティア開始である。小さい組織ながらきちんとしているという印象だが、これはイギリスのチャリティでは普通だという。
毎週金曜日は、美しいガーデンの中で夕食を作り、ご飯を食べながらおしゃべりしたり歌ったり踊ったりする。これもセラピーの一環
Room to Healは、中東・アフリカを中心とした世界30か国から毎年80人ほどの
「トラウマを抱えた難民申請者」を受け入れている。彼らは、政治思想や人種的理由、そしてレズビアンやゲイなど、セクシャルマイノリティであることなどにより迫害され、
レイプや拷問等の「集団的暴力」を受けたためイギリスへと逃れた人々である。
Room to Healでは、難民申請や生活保護の申請などの実務的なサポートと同時に、トラウマを癒すための精神的サポートを行っている。
団体がサポートしている「トラウマを抱えた難民」という、「難民」と「トラウマ」がセットになった言葉は、少し聞きなれない。しかし、
「難民申請者たちがトラウマを抱えている可能性が高いことは、この国ではよく知られている」と代表のエリーは言う。
確かに、レイプや拷問等の酷い暴力の結果、フラッシュバックやPTSDを抱えている難民が多いことは想像に難くない。