疑問点の最後に、
解剖結果の報道向け資料が環境省・県・村のどのウェブサイトにも公開されていないという点がある。
筆者は「北限のジュゴン調査チーム・ザン」が環境省沖縄奄美自然環境事務所から入手した解剖結果を見せてもらった。チーム・ザンによると、同事務所は「希望者には送る」と答えたそうだが、一般の人々の関心も高い天然記念物のジュゴンの死因がなぜこれほどまでに隠されるのか、理由は明らかでない。
ジュゴンが周辺海域に生息していた古宇利島から古宇利大橋を望む。筆者撮影
ジュゴンが死んでわかったことがある。当然のことかもしれないが、
防衛省・沖縄防衛局は「ジュゴンを守らない」ということだ。
象徴的なできごととして、今年6月の環境監視等委員会で、委員の一人が
「ジュゴンの通常の頻度を上回る鳴き声を記録した時点で個体の状況確認に至らなかったのか?」と疑問を呈した。
それに対して事務局である防衛局は、
録音されたデータは定期的に回収した後に解析の必要があり、「リアルタイムでわかるわけではない」とあっさりと認めた。
防衛局は水中録音装置による監視の他に、ヘリコプターによる生息確認(月に3〜4回)と船による監視も行なっているが、目的はあくまでも「保護」ではなく「監視」である。
そしてもっと重要なことは、沖縄のジュゴンの「絶対的な危機的状況」が顕在化したことだ。
3頭しか確認されていないうちの1頭が死んだ。そして辺野古沖・大浦湾、及びその北の嘉陽沖で確認されていた他の2頭も行方不明になっている。
環境省、沖縄県、そして人々や市民団体も含めてその重大さを十分に認識し、関係機関には生息状況の調査や具体的な保護計画、実施のための予算確保などが求められる。環境保護団体からは、行方不明になっているジュゴンへの影響が懸念されることから、新基地工事停止の必要性も指摘されている。