過去を見るとわかる「増税反対」と言っただけで警察に排除されることの異常さ<短期集中連載・政治家ヤジられTIMELINE・Part1>

政治家への「ヤジ」排除はヤバすぎる!

 こんにちは。学生ジャーナリストの日下部です。周りの人たちからは「ひもっち」と呼ばれています。  今年の7月15日、札幌で行われた安倍首相の街頭演説において、「安倍やめろ」「増税反対」とヤジを飛ばした聴衆2人が、警察官によって排除される事件が起こりました。とても恐ろしい世の中になってしまったと思うと同時に、この事件に関する報道の多くが、法律論に終始し、事の重大さがあまり伝わっていないとも思いました。  そこで今回は、表現の自由が危機に瀕しているという現実を、もっと多くの人に、もっと分かりやすく伝えるために、過去と今を比較し、現在の異常さを可視化していきます。  日本で初めて選挙が行われた1890年から現在までの129年間に、政治家の演説中に国民が飛ばしたヤジを紹介していきます。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞のデータベースで、『ヤジ 排除』『演説 ヤジ』などと検索しヒットした1707件の記事から、立会演説会や街頭演説でのヤジを本記事では取り上げています。今回は、1890年から1976年までの10の演説を紹介します。

1890年8月某日『北陸某県の議員』

【時代背景】この年の7月1日に日本で最初の選挙が行われた。選挙権を持っていたのは、25歳以上で、直接国税を15円以上納税している男性だけ。女性や、僕みたいな貧乏人は投票できなかった。そんな日本最初の選挙でのこと……。  旦那の演説会で、妻と妾がヤジ合戦をした。ヤジの詳細は不明だが、記事によると妻が旦那の政策を批判する一方で、妾は賛成したそうな……。 <出典:「妻否妾賛(歳費賞賛)議員 北陸選出・某議員の妻妾、旦那の演説会でヤジ合戦」1890年8月23日 読売新聞 朝刊>  カオス以外の何物でもありませんね……。

1893年8月15日『自由党 星亨・龍野周一郎』

【時代背景】星亨(ほしとおる)は貧困家庭に生まれたが、陸奥宗光に見出され出世していった。星は、豪腕政治家と評される一方で、数多くの汚職疑惑や、政党支持を得るための地方利益誘導などを行い、批判されていた。この演説会の直前にも、取引所設置に関し、後藤象二郎と星亨が業者から賄賂を受け取ったという報道がされていた。 ヤジ1「賄賂取りの隊長」 ヤジ2「陸奥(陸奥宗光)の庭掃小僧」 ヤジ3「後藤(後藤象二郎)の草履取り」  満場一致のヤジに堪りかねた星たちは、途中で演壇から下りてしまったとか……。 <出典:「星亨一行の富山演説会さんざん 満場ヤジ飛び交い、中途で演壇から下り」1893年8月29日 読売新聞 朝刊>  この時代のヤジ、レベルたけえ! 
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バカヤロー解散の吉田茂vsヤジ
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