過去を見るとわかる「増税反対」と言っただけで警察に排除されることの異常さ<短期集中連載・政治家ヤジられTIMELINE・Part1>

1950年5月18日『自由党 吉田茂首相』

【時代背景】この年、海外では朝鮮戦争が勃発し、国内では、自衛隊の前身である警察自衛隊が創設された。吉田首相は、自己主張が強くそれを強引に通したため「ワンマン宰相」と呼ばれていた。ちなみに、吉田首相の孫には麻生太郎財務大臣がいる。 吉田「自分は愛国者だ!」 ヤジ「愛国者は首相一人ではないぞ」  ヤジった学生、江上くんは、自称警備員の青年数名に詰め寄られ、肩や頭を殴られシャツをビリビリに破かれた。さらに演説会終了後、自称警備員の青年たちに控え室に連れ込まれ吊るし上げられた。なおこの場合の「吊るし上げ」が、縛って高い所に吊るすの意味か、集団で厳しく糾弾するの意味か、どちらかは不明。 <出典:「ヤジ学生吊上げ」1950年5月18日 毎日新聞 日刊>  自称警備員、過激すぎだろ……。でも今の日本もかなり近くなってる気がする。

1953年4月1日『自由党 吉田茂首相』

【時代背景】吉田首相が社会党の西村栄一議員との質疑応答において、バカヤローと小さく呟いたのを偶然マイクが拾い、これがきっかけとなり衆議院が解散した。通称、「バカヤロー解散」。  日比谷での演説中に ヤジ1「バカヤロウ」 ヤジ2「(石炭業界との癒着について)石炭内閣」 ヤジ3「(吉田13人衆と呼ばれる、側近を従えていたことについて)側近政治は民主政治か」 吉田「ノウノウと野次を飛ばす諸君は政治を解しておらぬ奴らである」 <出典:「“解散がなぜ悪いか” 自由党日比谷大会 首相、ヤジに終始強腰」1953年4月2日 読売新聞 朝刊>  バカヤロー解散した人が、バカヤローとヤジられるとはなんたる皮肉……。安倍首相も警察に頼んで排除なんかさせずにやましいところがないなら堂々対応すればいいのである。

1955年1月6日『自由党 有田二郎氏』

【時代背景】この年、サンフランシスコ講和条約に対し賛成派と反対派に分裂していた社会党が再統一。それを脅威と感じた保守陣営も日本民主党と自由党が合同し、自由民主党が結成した。それ以来、与党が自民党、野党が社会党という55年体制が38年間続いた。  自由党の有田二郎氏は、前年に贈収賄で逮捕され懲役2年執行猶予3年の有罪が確定していた。 ヤジ「汚職代議士引っ込め」  場内騒然。有田氏、その場に立ち往生、わずか3分で降壇してしまった。 <出典:「ヤジの応酬 自由党大阪遊説」1955年1月7日 読売新聞 朝刊>  ド直球なヤジ。これには有田氏ぐうの音も出ず。  ちなみに、この有田氏、1953年8月1日の議会で、右派社会党の堤ツルヨ議員による「断末魔の自由党」というヤジに対して、「パン助黙れ」と応酬して女性蔑視発言として大問題になった人物でもある(参照:1953年8月2日付け朝日新聞)
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暴走するヤジの時代
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