「
ポエム」と呼ばれるパターンの発言は以下の通り。
【2013年3月16日】
”(首相官邸で就職活動に関する会議に出席後、記者団に)国会議員になって、首相官邸に入るのは初めて。私はまだまだ、この権力の館に(政府の一員として)入る前に、泥臭く汗臭く、地に足がついた活動をすることが不可欠だと思った。例えば、ぞうきんがけを与えられた時も、誰よりもピカピカに磨いてやろうと。日本一のぞうきんがけになってやるという思いでやらなきゃいけないなと。だから青年局長を全力でがんばる”
<出典:(発言録)「地に足ついた活動が不可欠」 自民・小泉青年局長 2013年3月16日 朝日新聞>
普通の政治家だと、「(具体例をあげ)〇〇を頑張る」と言うが、
小泉氏は言質を取られないために、よくわからない比喩表現を用いて、全てを抽象化する。これぞポエマーだ。
【2013年3月28日】
「(国会内で記者団に)少子化対策は結婚支援策から考えなければ。独身の自分の立場を言えば、出会いは国会の場では嫌です。家で政治の議論をしたくない。皆さんの監視が緩ければ(恋愛は)楽なんですけど。いまはツイッターなどがあり、一人ひとりがマスコミみたい。それをかいくぐり、少子化問題を堂々と語れるようになるには、時間がかかるかもしれない」
<出典:(発言録)小泉進次郎・自民党青年局長 28日 2013年3月29日 朝日新聞>
少子化対策の話をすると見せかけて、
自身の恋愛の話に論点をすり替える。さすがのテクニックだ。
【2013年8月7日】
”(沖縄の米海兵隊演習場キャンプ・ハンセン内に米軍のヘリが墜落したことについて)米軍のヘリが落ちたという一報の受け止めは「またか」という印象が少なからずあっただろう。沖縄の基地負担をどうするか。危険性の除去が何よりも大切だ。自民党の抱えている責任は重い。いくら(新型輸送機)オスプレイと墜落したHH60とが違うとはいえ、上空を飛ぶものが落ちたことで同じ不安をもつ。なぜ日本にHH60やオスプレイが必要なのか。日本の平和を守り、有事の説明をすることが国会議員、政府の責任だ”
<出典:「沖縄の基地、危険性除去が大切」小泉・自民青年局長 2013年8月7日 朝日新聞>
前半では危険性の除去が何よりも大切だと語り、なんとなく自民党批判にも取れることを言っているが、これもやっぱり具体的方策は示さず、
国会議員や政府といった大きな主語を持ち出して話を抽象化し、現在の自民党の姿勢を追認する後半部分へと繋げている。これぞ、党内の異端児を演出する見事なポエムテク。
【2014年7月17日】
”(政府の社会保障制度改革推進会議で)最近ワールドカップを見て感じたのは、結局一人ひとりに、国の制度の中で支援を必要としない圧倒的な個の力があれば、社会保障なんていらないんですね。たとえば(コートジボワール代表の)ドログバや(得点王になったコロンビア代表の)ハメス・ロドリゲスみたいな、1人で局面を打開できる人の集団だとしたら、そういった制度は必要ない。だけど、1人では負えないリスクをみんなで分かち合って生きていこうという制度が、国だからこそ、社会保障や安全保障など様々な制度が必要になってくると思う。なぜ社会保障が必要なのか、そこからしっかりと掘り下げ、分かりやすく発信をしていく必要があるのではないか”
<出典:(発言録)「圧倒的な個の力あれば社会保障不要だが」小泉進次郎氏 2014年7月17日 朝日新聞デジタル>
例えでサッカー選手まで出しているが、言いたかったことは、社会保障の大切さを発信していくということなのだろうが、そこまで冗長に語ることだろうか……?
【2015年10月5日】
「(少子化について)少子化対策に取り組んでいる多くの人たちが言っているのは、第3子以降の重点支援だ。しかし私は違う。第1子支援をすべきだ。私たちの世代、もっと若い世代、今の時代、1人目を持つのも大変な時代だ。3人目以降、重点支援しますよと言われて、果たして本当にインセンティブになるか。アベノミクス第二弾で少子化対策を重点的にという話が出てきた。多くの子どもがいる世帯の支援。そこは私とちょっと違う。これから自分の立場の中で、党に戻って、今の政府の立場を抜けてもやっていけばいい。地道に訴える」
<出典:
(発言録)少子化対策「第1子支援をすべきだ」 小泉氏 2015年10月5日 朝日新聞デジタル>
「第一子支援を」という意見には大いに賛同だ。しかし、後半になるとまたまた抽象的な自分語りになってしまう。結局、具体的には何をするのかと、頭の中に疑問だけが残る回答だ。
【2018年7月31日】
「(自民党の杉田水脈衆院議員が月刊誌で、同性カップルを念頭に「子供を作らない、つまり『生産性』がない」などと主張した問題で)あれはありえない。いかに人生100年時代をそれぞれ多様な価値観で支えていくかということをめざして、人生100年時代(の議論)や働き方改革などをやっているなかで、やっぱりあれは違う。
ああいう発言が(自民)党内から出てしまうことが悲しい。一方で、本当に『多様性とは何なのか』ということを深く突き詰めて考えたことが日本はあまりないんじゃないかなと思う」
<出典:
子供作らない=生産性ない「ありえない」自民・小泉氏 2018年8月1日 朝日新聞デジタル>
ありえないとは言っているが、人生100年時代や働き方改革は、やはり微妙に論点がズレている。メディア向けに「党内の異端児」的なアピールはできているが、しっかりと行動に結びつけて欲しいのだが……。
「セクシー」よりも具体策皆無の回答に海外記者も驚愕
【2019年9月24日】
「(国連の温暖化対策サミットに出席するために訪れているニューヨークで行われた記者会見で)気候変動のような大きな問題は楽しく、クールでセクシーでなければならない」
「(発言について報道陣に問われ)それを説明すること自体がセクシーではない。あの場で私と一緒に同席してくれた人の会合の中での言葉の一つであり、やぼな説明はいらない」
<出典:
「気候変動への対策は“セクシー”に」 小泉環境相 2019年9月24日 NHK NEWS WEB>
そしていま大いに話題になっている「セクシー」発言。「sexy」という表現については、確かに国連関係者の言葉を引用したものだし、砕けた使い方で「ワクワクするような」という意味で使われることもあるのだろう。しかし、問題はこの発言が話題になったことであまり報じられなくなった前の部分にある。
海外メディアの記者から、「環境省は半年から1年かけて、化石燃料脱却へどのように取り組むのか?」と問われたところ、進次郎氏は「減らす」と一言。当然記者も「どうやって?」と聞き返したのだが、それについては無言、後に「まだ大臣になって10日しか経っていないので」と言った箇所だろう。
いよいよポエムの腕が上がリすぎるのはいいが、さすがに中身なさすぎである。しかも、その後の対応はセクシーじゃないですね。
上記発言のように小泉氏は、自分の政治的スタンスを明らかにしないためなのか、言質を取られないためなのか、『自己啓発』や『ポエム』という手法を使って、話を抽象化させたり、論点をずらしている。
小泉氏は発言以外にも徹底して、自らの政治的スタンスを明らかにしない。2014年と2017年の衆議院選挙の際「朝日新聞・東大谷口研究室共同調査」と、毎日新聞の候補者アンケートに、多くの政治家が答える中、小泉氏は全ての質問に無回答だった。小泉氏の政治哲学は、いまだに謎に包まれている。