移住先としても人気のタイ。ただ、食い扶持探しは年々難関に

さらにネックはビザと食い扶持の確保

 移住コストが高いバンコクではあるが、決して移住先として不適格というわけではない。しっかりとした下調べと計画を持ってすれば、バンコク移住は日本の生活より豊かになる見込みは高い。タイ人は南国の人らしく明るく、その雰囲気で生活することは、我々日本人にも明るい影響を与えてくれるようだ。
便利になったバンコク

高級デパート。バンコクはいまや日本と同じくらいになんでも手に入るようになった

 ただ、筆者が初めてタイに来た20年前とは事情が少し変わってきているようで、あまり移住予算が取れない、企業に就職を希望する移住者は注意が必要だ。現地採用者(以下「現採」)という立場で働く方法があり、毎月の収入が確保できること、それから最も大切な滞在ビザと労働許可証が得られる。  ただ、タイは長期滞在におけるビザの確保が難しくなっている。タイ人を配偶者に持つことで長期滞在のビザを得ることはできるが、日本人とタイ人の国際結婚は案外に少ない。多くの人が起業して法人名義でビザと労働許可証を申請するか、就職して現採となりそれらを確保するかしかない。正直言えば、金銭は今の時代ネットでいくらでも稼げる。逮捕覚悟で不法就労をする人もいるなど、食い扶持はどうにかなる。しかし、ビザだけはタイ政府が公務員の賄賂受け取りに厳しくなっている今、正攻法で取得するしかなく、外国人はみなビザに苦労している。  起業するにも資本金や運転資金、店の内装などに数百万から数千万円はかかる。  そうなると、資金がない人は現採を検討することになる。バンコクには現採を求める企業と現採希望を繋ぐ人材紹介会社がある。日本の人材派遣とは異なり、双方が登録するとその紹介会社が面接をセッティングする。採用が決まり、規定の期間(多くが研修期間1~3ヶ月)雇用すると、規定の報酬金を採用企業が紹介会社に支払うというものだ。現採希望者は一銭も費用を払わず、就職ができるという仕組みである。

「右も左もわからん日本人」は現地採用も難しい

 しかしながら、その現地採用も年々難しくなっているのが現状だ。  20年くらい前はタイに進出する企業もタイのことがわからないので、日系であれば最低でもタイ語ができる日本人現採を求めていた。それが徐々に日本企業間のビジネスが拡大してきたので、極端な話、英語もタイ語もできなくてもよく、日本のしきたりがわかる日本人なら誰でもと、引く手数多の時代が来た。  しかし、タイ人の大卒が増えている今、そういう時代も終わりつつある。タイ人の従業員のスキルも上がっているため、右も左もわからない日本人はいらないという日系企業が増えてきたのだ。  タイに来てまで日本の企業に勤める必要はないと思う人もいるだろう。確かに、タイ企業も日本人現採を求めてはいるが、タイ語がかなりできる上にタイの習慣に精通していないとかなり難しい。突然の解雇や不当な扱いというのはいまだに少なくないためだ。  欧米企業もあるが、こちらもまた日系企業以上に即戦力を求める傾向にある。海外留学するタイ人も今や少なくないので、そういった若い地元戦力と比較すると、タイのことを知らない日本人の競争力は低いと言わざるを得ない。
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日系企業現地採用で強みとなるものとは?
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