以上三点だけでも、トウモロコシ275万トンどころか、
50万トンですら緊急輸入する理由はありません。そもそも、数十万トン程度ならば125万トンの備蓄で吸収できるため、無理に緊急輸入せずにトウモロコシ相場の安いときに備蓄の回復と積み増しをすれば良いだけです。
ツマジロクサヨトウは、たいへんにやっかいな外来害虫です。そもそも在来のヨトウムシ自体が非常にやっかいな害虫なのですが、既述のようにツマジロクサヨトウは、在来のヨトウムシが好まないイネ科の植物を好むため、トウモロコシやお米といった穀類を食害します。
しかし、最低気温10.9℃を割り込む日が続くと、生育できず、最終的に死滅するとされています。幸い、九州、本州、四国、北海道の四島では、冬は平均気温ですら10℃未満になりますので、ビニールハウスに入り込まれない限り、本土で定着する可能性はありません。但し、沖縄、奄美、種子島、屋久島には定着する可能性があります。
従って、正念場は来年の春以降でしょう。
一方で、中国では制圧に成功したという報もあります*ので、中国、台湾、韓国、北朝鮮などと国際協力しながら制圧することも不可能では無いと思われます。事実、中国では備蓄政策の失敗によるトウモロコシの過剰作付けと豊作が相変わらず続いており、凶作という情報はありません。
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害虫ツマジロクサヨトウ、危機的時期を脱却2019/09/19 NNA ASIA>
いずれにせよ、今年は
ツマジロクサヨトウによる食害でトウモロコシの収穫が受けた打撃は軽微というのが確認できる限りの事実です。
そして国内生産分のトウモロコシは、デントコーンは全草サイレージにする為早期収穫するので今年は大きな被害を受けず、しかも子実のみの輸入デントコーンとは用途が全く異なり、代替は不可能です。仮に国内生産分の飼料用トウモロコシが不足したとしても、最近は見かけることも減りましたが、一時流行った飼料米全草サイレージ*で代替する方が遙かにましでしょう。
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稲の家畜飼料としての生産・利用の状況 平成19年12月 農林水産省、
飼料米への誤解2018/01/15農業協同組合新聞>
仮に全草サイレージをすべて濃厚飼料に切り替えれば、家畜は死んでしまいます。人間が野菜もお肉も無しで白米と米ぬか、ビタミン剤だけで生きて行けるかと言えば、それは難しい話で、家畜は人間よりも繊細です。
そして量的には275万トンどころか数十万トンも必要か怪しいことで、それは国家備蓄、民間備蓄の合計125万トンの備蓄で十分に変動補償できうる範囲です。
今回の緊急輸入ですが、官邸の会見で概ね三ヶ月分(250〜275万トン)のデントコーンを緊急輸入し、その理由がツマジロクサヨトウによるトウモロコシの食害と発表した時点で、
「安倍社交」を正当化するための大嘘と看破できました。しかし、様々な翼賛デマゴギーがまことしやかに流布され、
公共放送であるNHKや全国紙までが両論併記という形でこの翼賛デマゴギーに加担したためにファクトチェックにはたいへんな労力と時間を要しました。
まさに政府腐敗であり、言論の腐敗です。まるで80年前に時間旅行したかのようです。市民の税金だけで無く、農家の財産や場合によっては生命まで危険にさらす翼賛デマゴギーは断固として排除せねばなりません。
この新シリーズでは、三回から四回で今回挙げた三点を中心に解説してゆきます。
なお、ツマジロクサヨトウについての農水省のファクトシートが今年6月に公表されています*。また、アフリカのツマジロクサヨトウについて、CIMMYT(2018)により技術ガイドが出版されています**。本件は、アジア各国の密接な連携と情報交換、農業技術交流が必須と言えます。
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侵入を警戒する病害虫に関するファクトシート ツマジロクサヨトウ2019/06/07農水省>
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Fall Armyworm in Africa:A GUIDE FOR INTEGRATED PEST MANAGEMENT First Edition, B.M. Prasanna, Joseph E. Huesing, Regina Eddy, Virginia M. Peschke, eds. 2018 USAID, CIMMYT, CGIAR>
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』トウモロコシ275万トン緊急輸入1
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まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについての
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