NURO光で「見られないサイト」が!? 原因となったGeoIP技術とは

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インターネット接続サービスによって見られないサイトが発生?

 8月の末に、特定のインターネット接続サービスで使用されているIPが原因で、複数のWebサービスが利用できないという内容のブログ エントリーが話題になった(参照:ねこんこ2)。  ブログでは「そのことをサポートに相談したが解決しなかった。同じ接続サービスでも、問題の動画サービスを利用できている人もいる。使いたいサービスが使えないので解約したいと伝えると、違約金と工事代金が掛かると言われた」そうした内容が綴られている。  投稿されたエントリーでは、接続サービスのサポートの対応に憤っていた。しかし、ブログを読んだ技術者のあいだでは、そのトラブルの背景にある GeoIP 系技術に関心が集まっていた。

IPアドレスから地域を特定するGeoIP技術

 トラブルの原因は、インターネット接続サービスから割り当てられたIPアドレスにある。IPアドレスは、Internet Protocol Address の略で、インターネットに接続する機器に割り当てられた識別番号である。「153.124.196.146」という表記を見たことがあるかもしれない。これは、IPv4(Internet Protocol version 4)と呼ばれるIPアドレスになる。  こうした数字の表記よりも「hbol.jp」のような表記の方がよく見るだろう。こちらはドメイン名と呼ばれるものだ。IPアドレスは、人間には分かり難いために、人が読めるような名前を付けたものがドメイン名だ。ちなみに「153.124.196.146」は、「hbol.jp」のIPアドレスを WHOIS(IPアドレスやドメインの登録者の情報を照会するサービス)で調べたものだ。  最近では、この IPv4 が枯渇してきたので、IPv6(Internet Protocol version 6)への以降が進んでいる。IPv4 は、2の32乗で約43億個しかなかった。全人類の数よりも少ない。しかし、IPv6 は、2の128乗で膨大な数を識別可能になっている。  さて、GeoIP の話をしよう。GeoIP は、IPアドレスを使った Geolocation(地理位置情報)システムだ。狭義では MaxMind 社のサービスを指す。広義ではIPアドレスから地域を推測する、同種のサービスを指す。  MaxMind 社の GeoIP は現在 GeoIP2 となっており、有償版以外にも無償版の GeoLite2 がある。試みに無償版の GeoLite2 City のCSVファイルをダウンロードしてみる。圧縮ファイルで40MB。解凍すると292MBになる。  データには複数のファイルが入っており、その内 IPv4 のデータは197MBで325万行だ。IPアドレスにはIDが割り振られており、各国語のデータを見れば、その言語での国や州、県の名前が確認できる。  こうしたデータを使えば何が分かるのか。アクセスしてきたユーザーのIPアドレスを検索することで、そのユーザーがどこからアクセスしてしてきたのかが分かる。たとえば「日本の東京都」からアクセスしている。あるいは「中国の湖北省」からアクセスしている。そうしたことが調べられる。  詳細なデータは不要で、ざっくりとした場所が分かればよい。そうした企業は、この無償版を利用しているだろう。有償版になれば、さらに細かいデータになる。  Webサービスの中には、アクセスしてきた地域によって、表示を変えたい場合がある。たとえば航空会社のページを考えてみる。東京からのアクセスと、沖縄からのアクセスでは、内容を変えた方がよいかもしれない。  また、Webサービスの中には、日本人のみを対象にしているものもある。そうしたサービスでは、他の国からのアクセスを遮断したいと考えるかもしれない。無駄な通信トラフィックを減らして転送量を節約するためだ。  そうした地域毎の細かな処理を行いたい場合に、GeoIP 技術は役に立つ
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発生したトラブルの原因は何だったのか?
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