この判決で、カラトラバの責任とされた一つが20年の耐久性あるとされたガラスで出来た段差の床版は雨が降ると利用者が足を滑らすという危険性から床版の材料を変更せねばならなくなったことであった。また身体障碍者が利用できるためのアクセスの為の設備が当初から設計されていなかったというミスを犯したことで建築様式を変えることなくその為のアクセスを設ける為に200万ユーロ(2400万円)を加算せねばならなくなったということもある。
その他に、配管や資財の耐久性の問題などが罰金の対象になったという。(参照:「
El Pais」)
結局、ベネチアにある400の橋の中で最も新しいカラトラバの橋が特別機器で頻繁に検査せねばならなくなっているという皮肉な事態が起きている。しかも、その維持費用だけでも年間167000ユーロ(2000万円)の経費がかかるというのである。
更に、建設期間も当初1年と予定されていたのが、工事の補修などで6年もかかったということ。
完成した当時のマッシモ・カシアリ市長は公式のオープニングセレモニーを行わず、内輪で祝福しただけにしたという。結局、ベネチアのシンボルになる予定だった橋が逆に悩みの種の橋となったのである。(参照:「
ABC」)
カラトラバは建築家として、当初、特に橋の設計建築を良くやっていた。が、建設費用が当初の見積もりから2倍に跳ね上がって市民が憤慨したのがイスラエルのエルサレムで建設された弦の橋である。
ワイナリーのボデガ・イシオスの社屋の2001年の建設で雨漏りがするということで200万ユーロ(2億4000万円)の修理代をカラトラバが負担すべきだという訴訟も起きた。
筆者が在住するバレンシアでも建設費が4500万ユーロ(54億円)も上回ったという芸術科学都市がある。4811平方メートルの敷地内にオペラハウス、科学館、プラネタリウムなどが建設されているが、当初の建設費用は3億ユーロ(320億円)と見積もられていた。ところが、最終的には4500万ユーロほどオーバーして完成したのである。
バレンシアの芸術科学都市 photo by samboep via pixabay
バレンシア州政府は2014年にこの過剰な予算オーバーに訴訟を起こす予定であったが踏みとどまった。カラトラバがバレンシア出身の建築家であるということから外部から州政府に圧力があったものと思われる。また彼は州政府に癒着もしていた関係もあう。一方のカラトラバはこの都市建設で9400万ユーロ(112億8000万円)の報酬を稼いだのである。(参照:「
Monocloa」)