コンビニのイートインは10%
一方でスーパーやコンビニは、イートインスペースがあっても、会計時に持ち帰りかどうかを一人一人確認する必要が生じるのでは。
「
買ったものをイートインで食べれば、軽減税率の対象外で10%です。でも小売店は『ここで食べる場合は申告してください』と明記したポスターを貼っておけば、レジでお客さまに尋ねなくてもいいのです。実際はイートインを利用するお客さまも『ここで食べます』とわざわざ言わないかもしれない。店側も消費税は預かっているだけで、8%でも10%でも得も損もしないので、持ち帰り客がイートインで食べていても積極的には注意しないのが賢明だと思うでしょう」
たかが2%のために、嘘はつきたくない。されど周りが黙っているのに自分だけが馬鹿正直に白状して損をするのも癪なだけ。それならいっそのこと、出前や宅配を頼む人が増えると予想されるが。
宅配業界は一時的な特需が期待されるが、人員不足がどう響くか……
「デリバリーの潜在的ニーズは高いですし、出前館やUber Eatsなどの専門サービスの普及で、店側も始めやすくなっています。ただ
店で食べるより2%安くなっても、配送料はそれ以上にかかります。軽減税率を理由にするデリバリーの増加は、そこまで多くはならないでしょう」
節約のためには、いつもデリバリーとはいかない。かといって、レジでは良心を試される。増税によって財布だけでなく、心にも厳しい秋が訪れようとしている。
今回の増税では、専門家も思わず首を傾げたくなるケースがあると税理士の脇田弥輝氏は言う。
「近所のスーパーのセルフレジで、
みりんを買うと年齢確認が出てくるようになりました。みりんは酒類に分けられ軽減税率の対象外のため、すでにレジのシステムが変更になったのでしょう。みりんを買うたびに店員を呼んで年齢確認してもらうのはお互いに手間ですし、子供に買い物を頼むときにも気をつけなければなりませんね」
さらにややこしいことに、
アルコール度数1%未満の「みりん風調味料」や食塩が入っている「料理酒」は酒類に分類されず、軽減税率の対象になる。8%と10%の境界は、直感的にはわかりにくいものも多い。
「いっそのこと10%に統一してほしい、と事業者側から言い出すために、軽減税率を導入したのではと、うがった見方をしてしまいそうですね(笑)」(脇田氏)
軽減税率は海外ではもっと複雑だ。フランスではバターは軽減税率の対象なのにマーガリンは対象外だったり、カナダではドーナツの数で税率を判断する。脇田氏は「やがて日本も海外のようにさらに複雑な軽減税率を導入しかねない」と懸念を示す。
そんななか、「一体資産」を生かせば商機に繋がるとも氏は話す。