Webフォントの登場、日本語Webフォントの難しさ
環境によってフォントの有無があるのならば、必要に応じてダウンロードすればよい。そうしたアイデアは、比較的早く現れた。最初に現れたのは、1997年の Internet Explorer 4 だ(参照:
Embedded Fonts In Microsoft IE4pr2)。
Webフォントの機能を実現する「@font-face」指定が他のWebブラウザに導入されたのは、 Mozilla Firefox では2009年のバージョン3.5、Google Chrome では2010年のバージョン4になる(参照:
MDN、
Mozilla Firefox 3.5 Release Notes、
Chrome Releases: Stable Channel Update)。
個人的な実感としては、Webフォントの普及は、2014年のHTML5の最終勧告頃前後ぐらいからだと感じている(参照:
HTML5)。
ただ、Webフォントの普及は日本では難しい点があった。それは、日本語フォントは文字数が多いためにファイルサイズが大きかったからだ。英語のフォントならば100KB程度で済むが、日本語フォントなら1MBを越えてしまう。それも、デザイン上の見栄えを考えると、本文とタイトルで違うフォントを使いたい。複数のフォントを導入するとなると、10MBを越えるようなサイズになりかねない。
こうした事情があり、日本語環境ではWebフォントはなかなか普及しなかった。使用するにしても、使う文字以外を削って軽量化したフォントファイルを用意するなど、対策が必要だった。そうなると面倒なので、積極的に使うサイトは少なかった。
事情が変わってきたのは、Webの雄である Google が積極的な活動を始めてからだ。Google は Adobe と組んで、2014年に「Noto Sans CJK」というフォントを公開した(Adobe版も出ており、そちらの名前は「源ノ角ゴシック」という)(参照:
Google Developers Japan)。
このフォントは日本語、中国語(繁体 / 簡体字)、韓国語をカバーするもので、Google によるオープンソースのフォント「Noto」のシリーズになる。
この頃から、日本語Webフォントの風向きが変わってきた。Google は、WebフォントをGoogleのサーバーから利用できる
Google Fonts というサイトを2010年に立ち上げており、そこで「Noto Sans Japanese」が利用できるようになった。
2016年には、他のフォントを含む9つの日本語フォントの配布を早期アクセスとして開始した。いずれも、ネットでフリーフォントとして有名だったものだ。そして2018年の9月に正式サポートが始まった(参照:
Google Developers Blog)。こうして、ようやくWebフォントを日本語で利用する環境が整った。
Google のサーバーは高速なためファイルを素早く配布できる。また、多くのサイトが Google Fonts のフォントを利用すれば、わざわざダウンロードしなくてもローカルにキャッシュされたフォントが利用可能になる。
また、Google Fonts では、フォント全体をダウンロードさせるのではなく、使用頻度の高い文字を調べて、分割してフォントのファイルを送る方式にしている。そのため、必要最小限のダウンロードで、文書にフォントを適用できるようになっている。
現実的な速度と通信量で、Webページのフォントを製作者側で指定したとおりに表示できるようになったわけだ。
これからの時代、紙の印刷物は大きく減り、Webを通して文章を読む機会はますます増えるだろう。その際に、より美しく洗練された状態で文章を読みたいと思うのは、自然な感情だと思う。
Webの誕生から長い時間が経ったが、ようやくそうした環境が整いつつある。Webを利用してきた人間として感慨を持ちながら、最近のWebフォント事情を眺めている。