「鳥の日常に入り込む」……自然写真家が語る「鳥」撮影の極意とは

東京都写真美術館で「野生の瞬間 華麗なる鳥の世界」開催中

 日常生活の中で、ハトやヒヨドリ、オナガなどの鳥を見かけることがある。何気なしに、鳥特有のさえずりや自由に飛び回る様子などを観察すると、鳥の持つ習性や愛くるしい素振りに心を癒される。  ただし、普段見かける鳥の行動は、行動全体のほんの一部にしか過ぎない。人里離れた自然には、想像もし得ない鳥の生態系が存在しているのだ。そんな、鳥の知られざる世界を、長年に渡って撮影し続けている写真家が嶋田忠氏だ。  嶋田氏独自の着眼点から生み出される写真は、いまや世界中から注目されており、鳥の華麗なる生き様をまざまざと伝えている。美しい翼を広げる瞬間や獲物を捕らえる瞬間、雛に餌を与える瞬間……。  一瞬の出来事を切り出し、野性の赴くままに行動する鳥の姿を捉えた写真は、思わず引き込まれてしまう。  東京都写真美術館にて開催されている同氏の写真展「嶋田忠 野生の瞬間 華麗なる鳥の世界」(会期は9月23日まで)では、カワセミやアカショウビン、パプアニューギニアに生息する極楽鳥などの写真の数々を鑑賞できる。  8月17日には、写真展に関連するトークショーが開催された。「鳥から学ぶ」と題し、東京大学名誉教授であり鳥類学専門の樋口広芳氏と嶋田氏を招き、普段知らない鳥の生態系や鳥から学んだことについて語られた。

観察の連続が、鳥の息吹を表現する独自の流儀を生み出した

嶋田忠さん(左)と樋口広芳さん(右)

 まず、樋口氏と嶋田氏が、それぞれの鳥との馴れ初めについて語った。日本鳥学会の元会長であり、現在は大学で鳥類学を研究している樋口氏は、こう述べた。 「鳥との初めての馴れ初めは、小学校2、3年の時に姉がジュウシマツをもらって家で飼ったとき。中学生になると、キジ類を庭で飼うようになった。金鶏を初めて見たとき、こんなにも美しい鳥がいるのかと感銘を受けた。また、卵を産み雛から成鳥になるにつれて、見た目が美しく綺麗になっていくのを目の当たりにしたことが、鳥に興味を持った原体験である」  また、嶋田氏は家の近隣にある武蔵野の森が原点であると語った。 「私は大井町(現在のふじみ野市)で生まれ、近所にある武蔵野の森でよく野鳥を追いかけていた。4、5歳の頃から野鳥を捕まえては飼い、ある程度育てて飽きれば逃す。そしてまた捕まえる。こんなことを繰り返していた。不思議な行動をする鳥を見たいという願望から、父親に鳥小屋を作ってもらい、捕まえた鳥を眺めるのが好きだった。」  幼少期の鳥との身近な接点が、両者の鳥への造詣を深めたきっかけだったのだろう。
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鳥の世界には色々な楽しみ方がある
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