「部下や後輩が自ら、問題点を発見し、改善策を立案し、実行する」ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップは、上司や先輩が何もしなければ、コントロールできていない状況に陥ってしまう。部下や後輩がやることを放任することがボトムアップの巻き込み型のリーダーシップではないのだ。
では、ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップを発揮して、なおかつ上司や先輩が部下にやらせたいこと、会社として徹底したいことをさせるには、どうすればよいのだろうか?
なにも難しく考えることはない。「部下や後輩が自ら、問題点を発見し、改善策を立案し、実行する」というボトムアップの巻き込み型のリーダーシップを発揮したあとに、上司や先輩としてやらせたいことや、会社として徹底したことを助言したり示唆をしたりすればよいのだ。あくまで、助言や示唆で、指示・命令ではないことがポイントだ。
スキルを分解していくと、この順番を間違えないことが、ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップを発揮するコアスキルなのだ。
質問:有無を言わせずに実施させなければならないことがありますよね?
仕事というものは、部下や後輩がどのように考えていようが、賛成だろうが反対だろうが、有無を言わせず、やらせきらなければならないことだと思います。
上司や先輩の役割はトップダウンで指示をして徹底する以外にないと思うのですが、いかがでしょうか?
回答:必要のないことまで トップダウンで指示していないか
たしかに、たとえば法律やコンプライアンスを守る、製品の瑕疵をなくすというようなことは、そのとおり守らなければならないし、不備を皆無にするというように、いわば答えがひとつである取り組みです。そうした場合には、トップダウンで徹底することが適しています。
しかし、さまざまな取り組み方が可能なものについては、逆にトップダウンでやらせてしまうと、効果が出ない場合があります。たとえば、現場で起きていることを把握する、方針を実現するための方策を工夫する、問題の解決策を洗い出す、一緒にアイデアを出し合うというような場面では、トップダウンは効果をもたらしません。
トップダウンでやらせると効果が上がりにくいもの、トップダウンでやらせなくてもよいものまで、トップダウンで指示していないでしょうか。もしそういうことがあれば、トップダウンの指示を見直すことをお勧めします。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第150回】