もう一つの被災原発。女川原子力発電所<短期集中連載・全国原子力・核施設一挙訪問の旅3>

宮城県に入り仙台市へ

 Aさんが運転するコロラド号は、常磐自動車道を北上し、宮城県に入りました。宮城県に入ると津波被害の影響が幾分残るものの、復興がたいへんに進んでいました。とくに農地は、宮城県に入って以降全く何もなかったかのように耕作されていました。  本来行政境界と放射能汚染との間には関連性はなく、福島県と宮城県の県境で復興の度合いが極端に変わることはあり得ないのですが、福島核災害では、行政境界と復興に強い関連が見られることについて多くの指摘があります。今回は、時間の都合があって詳細な現地調査はしていませんので、このことについてはなんとも言えません。
復興が進んでいた宮城県内

2019/7/5宮城県に入ると農地での耕作も活発に行われ、復興も進んでいた 牧田撮影

 仙台市街地は、すっかり復興しており震災、津波の痕跡は殆ど見えませんでした。そもそも8年以上経過して、いまだに震災の傷跡を深く残すなど本来はあり得ないことで、福島浜通りの惨状は、まさに核災害の特徴と言えます。津波被害の場合は、その徹底した破壊と防災設計の難しさから復興計画立案が難しいためどうしても長い時間を復興に要しますが、やはり9年目ともなると復興の槌音は力強いものとなります。
仙台東部道路仙台空港IC付近

2019/7/5仙台東部道路仙台空港IC付近
この一帯は、築堤方式で建設されていたので、大津波から仙台平野西部と周辺住民を守る防潮堤となった。

 仙台市では、このとき参院選を控えていた石垣のりこ候補(当時。現、参議院議員)の選挙事務所を訪問し、ボランティアの運動員さんのおかげで仙台駅前商店街での証紙チラシ配りの街宣活動ができました。  石垣陣営は、当初の事前情勢分析では20ポイント愛知陣営に先行され、とても勝負にならないとされていましたが、2か月前の出馬表明以来の追い上げにより選挙序盤では横並びで名前が先に載る(名前が先に載るのは、優勢を意味する)までに至っていました。  地盤、看板、鞄の三拍子がそろった自民党の世襲現職議員である愛知治郎氏に対してこの様な破竹の大進撃は目を見張るものがありましたが、実際に選挙事務所を訪問するとたいへんな勢いを感じました。これは2年前の結党時の立憲民主党にあって今は無くなってしまったものと思います。初心忘るべからず。
石垣のりこ選挙事務所

2019/7/5石垣のりこ選挙事務所
中は非常に明るく和気藹々とした雰囲気でしかもたいへんな勢いを感じた

石巻、女川牡鹿半島へ

 2時間ほど仙台市に滞在した後コロラド号は、石巻市を経て女川町、牡鹿半島へと向かいました。三陸自動車道石巻女川ICを降り、国道398号線バイパスを女川へ東進しましたが、周囲は内陸移転事業真っ盛りで、急速に開発が進んでいました。これは石巻市が死者、行方不明者が人口の2.5%という甚大な津波被害を受けただでなく震災前から石巻女川ICと女川町を結ぶ動線として国道398号線バイパスの建設が進められていたことがあります。また福島核災害による放射能プリュームの影響が、あとに影響を残さないほどで済んだことが大きな鍵となっています。  さて復興の槌音響く石巻市から女川町へ向かう道を東進していたところ、いきなり一本道の前方が詰まってしまいました。工事かなと思い近づいてみると、なんと車が見事に横転していました。まっすぐな一本道で車がどうすれば横転するのか不思議でしたが、周囲の車から次々に人が降りてきて、黒山の人だかりとなり、横転した車を元に戻しはじめましたので、もう我々に出来ることはありません。緊急車両の邪魔にならないように来た道を戻り旧道へ塔向かいました。後続の自動車も一斉に我々の後に付いてきました。
宮城県石巻市沼津台

2019/7/5宮城県石巻市沼津台GoProによる
女川への主要道がありえないところで渋滞を起こしていたが、よく見ると車が横転していた

宮城県石巻市沼津台の拡大

よく見ると車が横転している

 牡鹿半島に入るとあちこちで道路改良工事をしていました。我々は、女川から県道220号線コバルトラインを女川原子力発電所に向かうと、大六天駐車場にたどり着きました。ここからは、塚浜集落と女川原子力発電所が見えました。  塚浜集落は、津波で壊滅し、現在は高台へ移転していますが、牡鹿半島の集落は、ほぼすべてがこのような状態で、神社しか残らなかったと言っても過言ではありません。道路もすべてが寸断され、女川原子力発電所には、近隣の集落から最大で364人の住民が避難してきたことが知られています。
大六天駐車場から女川町塚浜、塚浜地区を望む

2019/7/5大六天駐車場から女川町塚浜、塚浜地区を望む 牧田撮影
半島対岸の反対岸に立つ二本の塔は、それぞれ女川原子力発電所1号炉、2,3号炉の排気筒である。木立に隠れているが、手前の塚浜地区は、津波で壊滅し高台へ移転した

塚浜地区

2019/7/5塚浜地区GoProによる
正面の集落は壊滅したが、高台移転(写真右)していた。また道路の内陸部への付け替え・大幅改良の工事が進められていた

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そしていよいよ女川原子力発電所へ
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