菅官房長官が、自民党の総裁、そして首相を目指す上で、
絶対的に欠けているのが「血筋」です。菅長官は、高校卒業後に、秋田県から集団就職で上京してきました。父は、地元の町議会議員をしていましたが、政治家というよりも地元農家の顔役でした。その後、国会議員の秘書、横浜市議会議員を経て衆院議員になっています。
自民党の総裁に「血筋」という条件は明文化されていませんが、前述したように、過去30年で
実質的な「前例」となっています。もし、菅長官が総裁・首相を目指しているならば、自らに欠けるものとして「血筋」を意識し、それを補おうと考えるのは自然なことです。
菅長官が目指すロールモデルに適当なのは、森総裁モデルです。すなわち、
若手の有力世襲議員(安倍晋三議員)の後ろ盾となり、その勢力(清和政策研究会)の番頭として、彼につなぐまでのリリーフ総裁を目指すモデルです。ただ、森総理・総裁は、短期で失脚しましたが、失政や失言を防げば、長期政権も夢ではありません。その点の「危機管理」は、菅長官の得意とするところでしょう。
つまり、
菅長官は、小泉議員の番頭・リリーフとしての役割を担おうとしていることが、一連の報道からうかがえるわけです。
小泉進次郎首相による「自民党プリンス・番頭モデル」の確立
自民党の総裁は、16代の河野洋平総裁から、森総裁を除き、世襲議員によって占められています。それでも「自民党をぶっ壊す」の小泉純一郎総裁までは、派閥力学が重視されていました。ところが、小泉総裁によって派閥の機能が低下させられたため、「なんとなく血筋」という流れが生まれてきました。ちなみに、安倍総裁の対立候補の石破茂議員も、父が参院議員でした。
森総裁は、有力世襲議員の後見役、勢力の番頭として、就任しました。
世襲議員との補完関係によって総裁になりました。
すると、
菅義偉総裁と小泉進次郎総裁の誕生は、こうした「自民党プリンス・番頭モデル」が確立することを意味します。
世襲で周囲から見込まれた議員が「プリンス」として総裁・首相となり、非世襲議員は「番頭」として実力を示し、総裁・首相を目指す政治モデルです。これが、
自民党で首相を目指す政治家の王道となるのです。
「自民党プリンス・番頭モデル」の確立は、
自民党が第一党を占め続ける限り、日本で世襲政治が続くことを意味します。日本で首相になるには、自民党国会議員の家に生まれるか、その番頭を目指して這い上がるか、二つに一つとなるのです。
それは、
戦後社会のひずみを維持し、さらに強化することを意味します。重厚長大型の大企業を中心とする社会構造を維持し、そうした人脈につながることが、社会的な「成功」となるからです。「血筋」とそれを支える「実力」によって、人脈をひたすら強化することが、彼らのメリットになります。
そうした社会で良しとする方は、菅長官と小泉議員を応援し、この「自民党プリンス・番頭モデル」の確立を目指しましょう。自らが自民党の一員となり、藩屏として支えることも一つの方法です。
逆に、そうした
社会のひずみを解決したいと考えるならば、自民党を野党に転じさせる「政権交代」を求めることが必要です。自民党は、与党でいること自体を目的化する政党です。野党になれば、政権という生命維持装置を失い、次第に衰え、崩壊していくでしょう。
世襲政治で、社会のひずみを拡大するか、政権交代で、社会のひずみを解消するか。そのカギを握るのは、
有権者の選択です。