職員たちも心を痛め、過酷な労働条件によって病んでいる
長崎県にある大村入管でもハンストが行われている。
「ここに連れて来られたら最後、最も収容が長いところだ」と、被収容者たちには恐れられている。
6月下旬の、長期にわたって収容されていたナイジェリア人サニーさんの“謎の死”や、ハンストにより解放された人がいるということをきっかけに、大村入管ではハンスト参加者が最大で30人に上ったという。大村入管で面会ボランティアをしている牧師さんに8月3日、話を聞いてみた。
「現在、ハンストをする人は減って9人くらいになりました。
2~3人は命の危険を感じています。他の人は水だけは摂っていますが、スリランカ人男性だけは水も一切飲んでいないので、体重が70kgから50kgへと急激に痩せています。
7月30日、収容所内の礼拝の日に彼を見てびっくりしました。その時は面会室ではなかったので、彼に触れることはできました。
彼の気持ちもわかるので、ハンストをやめろとは言えず『水だけは飲んでほしい』と励ましたのですが、本人はこのままの状態を続けると答えました。どこまでもつのか、非常に心配しています。その夜、ただちに収容所の改善を求める申し入れ書を入管にファックスしました。
しかし、被収容者だけでなく職員たちも心配です。
今、大村入管では辞める職員が続出しているんです。処遇部門では休みもなく、昼食をとる暇もない。労働基準法違反の勤務体制で働かされている。職員のほうも、死者が出かねない状況にあります。
ナイジェリア人の死に対し、泣いて悔しがった職員もいる。そういう心ある人もいるのだと、小さいながらも希望を感じています。職員たちも心を痛め、過酷な労働条件により病んでいる。一入管所長レベルではなく、制度自体を変えていかないといけません」
収容者のハンスト、病人・死者の続出に対して、菅官房長官のコメントは!?
入管収容施設での外国人の扱いについては「法に基づいて適切に対応していると思っています」という見解の菅官房長官(首相官邸ウェブサイトより)
7月29日の菅官房長官による内閣広報室での会見で、記者が以下のような質問をした。
「東日本入管センターで長期収容に抗議して、約100人の収容者がハンストを起こしています。体調を崩した2人が再収容されたことで反発が広がり、過去最大規模になっています。人道的な観点からも問題だとの指摘がありますが、政府の見解を聞かせてください」
それに対し菅長官は
「法に基づいて適切に対応していると思っています」と、わずか一言のコメントを出した。
入管で外国人の命がまた絶たれ、そして次は誰がこの制度の犠牲になるのかはわからない。そして職員の命すら危ういこの状態で、
この「適切に対応している」の一言はあまりにも無責任で軽すぎるのではないか。人が死んでも誰も責任を取らない、これが果たして本当に正しいといえるのだろうか。
<文・写真/織田朝日>