さて、ドラッグストアの店舗といえば、駅前や商店街に立地し大型駐車場を持たない「
都心型」と、大きな駐車場を持ち売場面積も大きい「
郊外型」の大きく2種類に分けることができる。業界上位7社のうち、イオン系の2社は合併各社やイオングループのノウハウを生かすかたちで「都心」・「郊外」のどちらも主戦場としており、とくに郊外ではグループのメリットを生かしてイオン系列のショッピングセンター内への出店も多くみられる。
イオン系ショッピングセンターのテナントとして出店することも多いウエルシア。イオングループの拡大とともに成長を遂げた。(兵庫県川西市、イオンタウン川西・ダイエーイオンフードスタイル川西店)
そして、業界3位・4位の
「コスモス」と
「サンドラッグ」の伸びは、いずれも
西日本における「郊外型」の大型店の積極展開によるものだ。
「サンドラッグは都心型が多いのでは?」という声が上がってきそうだが、同社は2009に佐賀県の家電量販店を起源に持つディスカウントストア「
ダイレックス」を傘下に収めて以降に大躍進。現在はダイレックスの店舗を発展させるかたちで、西日本の郊外を中心にダイレックスの屋号で「総合スーパー(生鮮あり)+ディスカウントストア+ドラッグストア」という新業態の大型店を大量に出店しており、最近はダイレックスが「ショッピングセンターの核テナント」となっていることもある。現在、
サンドラッグの全売上のうち、このダイレックス事業が4割近くを占める。
サンドラッグが近年主力業態としている「ダイレックス」の新業態店舗(大分県杵築市、総合スーパー「寿屋杵築店」跡)。
看板には「薬」の文字が大きくあるものの、もはや「ドラッグストア」と呼んでいい規模か迷うところ
また、同じく西日本を地盤とするライバル「
コスモス」は
大型買収を一度も経ずに経営規模の拡大を実現しており、その勢いはすさまじい。
現在、この2社の主力業態である
郊外型店舗の売場面積はいずれも1,000平方メートルを超え、食品をはじめとして取り扱い品目も多く、ドラッグストアとしては大きな売場面積も売上増に寄与するものとなっている。
コスモスの標準型店舗は売場面積1,500平方メートルほど(建物の色は出店時期によって異なる)。
各店ともに大型駐車場を備える
一方で、今回「経営統合」を検討している
「マツキヨ」、「ココカラ」、「スギ薬局」の3社はいずれも売上高の伸び率が比較的低い。この3社は郊外店も少なくないものの、いずれも主力業態は「都心型」店舗。マツキヨは首都圏、スギ薬局は名古屋、ココカラは横浜(旧・セイジョー)と京阪神(旧セガミ・旧ライフォートなど)の駅前や商店街を主戦場としている。いずれの都心型店舗もコンビニと同規模かそれより少し大きい程度の狭小店舗が多いことも特徴であるが、大都市圏の中心部では複数フロアに及ぶような旗艦店を見かけることもある。とくにスギ薬局はこの4月に原宿に旗艦店を出すなど、首都圏での知名度を上げるべく都内駅チカでの展開を増やしている。
ココカラは多くの企業の統合で誕生したため、かつての屋号を残す店も多い。「経営統合への抵抗が薄い」という社風もあるのかも知れない。
写真の店舗は「マルゼン」「ライフォート」「ココカラファイン」という3つの屋号の看板を同時に掲げていた(兵庫県川西市)
こうした都心型店舗は駐車場がない、もしくは狭いことが多く、人口の多い地域の狭い商圏をターゲットに出店を行ってきた。
しかし、すでに大都市圏では何処の駅前であってもドラッグストアは進出済み。複数店が徒歩圏でしのぎを削る例も多く見かける。さらに、近年都心部では地価の上昇が続いており、家賃の負担も大きい。ドラッグストアの店舗面積の大型化も進んでおり、郊外店にも対抗しうるような品揃えが充実した大型店を出すには以前よりもかなり多くの費用が必要となっている。
都心型のドラッグストア運営企業がさらなる拡大を望むのならば、大型合併による競合店舗の整理、物流の統合などといった効率化を図ることが必須であろう。
大都市の中心部では複数のドラッグストアがしのぎを削るエリアも多くみられる(大阪市)