2.改善基準告示違反と休息時間不足
不規則で長時間労働化することが多い運送業界には、「運送業界版の労働基準法」といわれる「改善基準」という規則がある。
「4時間走ったら30分休まねばならない」というルールは以前にも紹介したが、この他にも「
1日(ないし2日間)に走れる時間」や、「
翌日の仕事まで原則的に連続8時間の休息を取らねばならない」といったことなどが盛り込まれている。
しかし、長距離ドライバーによくある
「朝イチ8時に取引先」という業務では、0時を待って高速を降り、取引先付近で休息しようとすると、この「8時間」が守れなくなるのだ。
そのため、
「せめて深夜割引が22時からであれば、高速を降りてから目的地付近で休息を取ろうとするドライバーが増え、SA・PAの夜間の混雑も幾分緩和されるのに」
と嘆くドライバーも多い。
これらで分かるように、トラックはむしろ、
「走る」以上に「停める」ほうが難しく、ゆえに「最寄りのSA・PAに行っても停められないかもしれない」という不安は、彼らにとって相当のプレッシャーになる。
そんな精神的負担を回避すべく、中には、最寄りのSA・PAよりもかなり手前のSA・PAで妥協するドライバーもいるが、そうすればその分、起床時間が早くなって疲労が抜けないだけでなく、早朝の移動距離が長くなり、事故や渋滞の遭遇率も上がるため、延着(遅刻)の危険性も高くなるのだ。
3.長時間労働
深夜割引がトラックにもたらすこととしてもう1つ大きいのが、「
ドライバーの長時間労働」だ。
改善基準で定められた「8時間休息」と、「深夜割引適用時間」を逆算すると、
不必要に早く出勤・出発し、途中で時間を潰さなければならないことが多くあるのである。
また、長距離ではなく、近場への配達で早朝から運行するトラックも、割引を利用するには午前4時までに高速道路に入っている必要があり、こちらも早めの出勤・出発が求められ、ドライバーはその後、やはりどこかで待機せねばならなくなる。
精神的により辛いのは、「戻り便」だろう。本来ならばもっと早く会社へ帰れるはずであるところ、
0時をSA・PA内で待って高速を降りれば、やはり拘束時間は長くなる。