男性も生きづらい現代社会。もっと楽になるために必要な考え方とは

自分が納得する生き方を選ぶ

 では、男性が生きやすくなるにはどうすればいいのか。田中氏は、「比較をやめること」を提案している。 「競争に煽られる人生は、強敵に勝つと、息もつかせず、さらなる強敵が現れるといった感じです。マンガなら面白いかもしれませんが、自分の人生としてはいかがですか。『難関大学』に入れば、確かに親や周囲は『安心』するかもしれません。でも、他人との比較でしか自分の価値を測れなければ、長い人生のなかで落ち着く日は来ないでしょう」  比較をやめるときに大切なこととして、田中氏は「見栄とプライド」について触れている。  見栄とは、他人よりも地位が高い、収入がある、良い腕時計を着用している、など比較をして自分を上に見ようとすることだ。見栄に生きる男性は、誰かを見下していないと安心できなくなってしまう。  対してプライドはどうか。田中氏は次のように説明する。 「プライドとは、何かを達成した際に、その人が成果に誇りを持つことで生まれる感情です。試行錯誤し、努力しなければプライドを確立することができません。他人との比較ではなく、自分の納得が重要になります」  プライドを確立しても、男性が抱える悩みが解消するわけではない。しかし自分なりの価値観が明確になれば、周りと比較して優劣で落ち込むことは少なくなるはずだ。

自分にも、他人にも寛容になろう

 個人だけでなく、社会全体の変化も求められる。いろいろな考え方や価値観を認め、「男だから」「女だから」と性別で生き方を制限せず、多様性を許容する社会が必要なのだ。 「いかにして多様性を許容するかを考える際、寛容が重要なキーワードとして浮上してきます。分かりやすく言えば、『やさしさ』が大切だということです」 「男は定年まで働き続けるもの」「長時間労働をすべき」というふうに決めつけてしまうと、それ以外の価値観、生き方を受け付けなくなるり、社会は柔軟性を失ってしまう。  いま当たり前のように思っている「男らしさ」とは何か。自分の人生にどう影響しているのか。それらを10代のうちに考え、さまざまな価値観を許容できる「やさしさ」を持てるようになれば、いまよりももっと生きやすくなるのではないだろうか。  自分の中に「それは男らしくない」という気持ちが湧いてきたとき、「それは決めつけではないか」と考え直そう。そのように感じさせてくれる一冊だった。 <文/薗部雄一>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
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