中野円佳さん
「正社員として同じ会社で長く働く」ということが否応無しに「良し」とされてきた日本社会。非正規雇用の不利益から脱出することは難しく、アルバイトやパートは時給1,000円前後で酷使される。正社員になるか、そうでなければ非正規として消耗させられながら働くか、といったように、限られた選択肢から選ばなければいけないという無意識的な「諦め」は、「ギグ・エコノミー」「シェアエコノミー」という概念の登場で、変わりつつあるのか。
7月23日、ジャーナリストの中野円佳氏の書籍『
なぜ共働きも専業もしんどいのか~主婦がいないと回らない構造』刊行記念イベントとして「多様化する働き方の未来:シェアリングエコノミーは共働き子育てを救うか?パネルディスカッション」が開催された。
中野氏がモデレーターを務め、フリーランスのプラットフォーム「ランサーズ」の取締役執行役員・曽根秀晶氏、CtoC家事代行プラットフォーム「タスカジ」の代表取締役社長・和田幸子氏、主婦の人材サービスを手がける株式会社ビースタイル「しゅふJOB総研」所長・川上敬太郎氏の3名を迎えたパネルディスカッションが行われた。
「男性のみが無限定な働き方をして、女性が家事・育児といった再生産を担うという構造が、日本社会では出来上がってきた。政府でも議論がされているジョブ型正社員のような枠組みに加え、市場から出てきた転職、フリーランス、家事代行などの多様な選択肢が、この構造を打破する希望の光になるかどうか」と中野氏は注目する。
個人が個人に対して家やスペースを貸し出す「Airbnb」、一般のドライバーが自家用車を使ってタクシーのようなサービスを提供する「Uber」など、個人同士で単発の仕事を取引する「ギグ・エコノミー」は世界的に広がりを見せている。一方で、個人で仕事を引き受けることから、低価格競争になってしまい、買い叩かれ、使い捨てにされるギグワーカーの労働環境の悪さは、課題視されている。
こうした現状に対して、個人間の家事代行プラットフォーム
「タスカジ」を運営する和田氏は対策を打っている。
「低価格競争になると、市場全体として働き手を失うことにつながってしまい、良くない。対策の一つとして、受注側が設定できる価格の下限をプラットフォーム側が設定するようにしている。受注者本人がそれ以下の価格を希望しても、受け付けない。家事代行という標準化できない仕事を本人がうまくプライシングすることは難しい。レビュー機能を活用することで受注者側に自信を持たせ、高い価格を設定できるようなマインド作りをしている」