「言葉としては丁寧だが、視線や姿勢に圧迫感があって押しつけているようだった」「押しつけないように気をつけているつもりなのに、フレーズの最後がすべて命令形になっていて、印象としては指示・命令されているようにしか受け取れない」「質問や意見を聞いているが、とってつけたようだ」……。自撮りしたビデオをみて、初めてそのように気づく人が多い。
指示・命令形を多用するかわりに、意識的に、それらのフレーズを疑問形に返るだけでも印象は大きく変わる。
「この方針で実施してみましょうか」「この内容で取り組むことについてどう思いますか」「来週までに実施したいのですがどうでしょう」「取引先に依頼していただけますか」というようにだ。
指示・命令をことごとく排除して、すべてを疑問形に変えていけば、相手は答えたり、少なくとも考えたりせざるを得ず、その分、腹落ち度合が高まり、行動に移されやすくなることがわかっている。
「先輩や上司たるもの、指示・命令をするのが仕事ではないか」という声が聞こえてくるが、指示・命令しても実際に行動に移されないのであれば、質問に変えて相手の行動を促す。そんな方法も試してみてはどうだろうか。
質問:指示をしても反応がないのはなぜですか?
部下や後輩に指示をしていても、相手がわかっているのか、いないのか、反応がわからなくて困っています。「反対なら反対、疑問があるならば疑問があると、はっきり言ってくれ」と伝えても、「別にありません」という答えしか返ってきません。
そういう場合の部下や後輩はいったいどういう気持ちなのでしょうか? 「別にありません」という返答がくること自体、腹落ちしていないという証のように思えるのですが。
回答:部下や後輩をあきらめさせてしまっている
部下や後輩が反発してこない状況を「賛成している」と見るか、「反対しているが、反論してこない」と見るかですが、反対意見や疑問は「別にありません」と答えるケースは、反対しているが反論してこない場合であると言えます。
反対意見や疑問を言ってくるケースは、部下や後輩は上司や先輩と議論しようという気持ちがあるわけですが、それを言ってこないということは、議論しても無駄だ、上司と話しても意味がないというように思っている場合が多いのです。
反論を言ってこないのだから、黙認したのと同じだと思ってしまうと、その状態をますます悪化させてしまいます。トップダウンの指示が高じてしまうと、このように部下や後輩をあきらめさせてしまう深刻な状態になるのです。
部下や後輩をあきらめさせてしまい、「別にありません」と 返答するようにならないように、手を打つ必要があります。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第148回】