国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)リサーチ・フェローのイヴォーン・ユー氏は、日本のメディアがもっとサンゴ礁の危機について取り上げるべきだと述べた。
「『チェイシング・コーラル―消えゆくサンゴ礁―』はネット配信だが、なぜ地上波でやらないのかと感じる。また、日本の海の調査をし、その現状をニュースとしてもっと報道していくべきだと思います」
また、「海外では海に潜る際にエチケットがあり、サンゴ礁を踏んで傷つけないように注意している。また、女性が使う化粧品の成分は、サンゴ礁に悪影響を与えると言われている。ダイビングのエチケットを守り、貴重な生態系を守ろうとする配慮が大事」と強調した。
マリン好きには人気アクティビティであるダイビング。だが、綺麗な写真を撮ろうとするあまり、サンゴ礁を傷つけるような行為は慎むべきだ。海が好きだからこそ海を守る。サンゴ礁を保全する。このような意識を持つことが求められる。
最近では地球温暖化による気候変動のみならず、海洋プラスチック問題もまた、サンゴ礁の生態系に影響していることが分かったという。
「海外ではプラスチックフリーが進んでいて、環境問題に配慮した紙のストローなどが日本よりも普及している。サスティナブルな考えのもと、人間の廃棄物がどれだけ海の生態系に影響が及ぶか問題視することが大切。まずは身近なことから環境に配慮した行動を意識したり、自分ごととして環境問題を捉えたりすることが。一人ひとりの意識が変われば、それが好循環を生み、問題解決の糸口がつかめる」とイヴォーン・ユー氏。
日本はなぜプラスチックフリーが進まないのか。それは日本人特有の潔癖主義が関係しているという。衛生に対する意識が過敏するがゆえ、無駄に包装をする傾向があるとのことだ。
脱プラスチックに向け、日本でも局所的には動きが見られる。しかし、今後さらにプラスチックフリーを推進する必要がありそうだ。
地球環境に配慮した形で、日頃の行動や暮らしの中で、何ができるのか。環境と共生できるのか。産業革命の弊害による気候変動や、生態系への悪影響によって起こるサンゴ礁の消えゆく実態。
この深刻な事態をドキュメンタリーで表現した映画「チェイシング・コーラル―消えゆくサンゴ礁―」は、1人の地球人(コスモポリタン)として環境問題を見つめ直すいい機会なのではないだろうか。
<取材・文/古田島大介>
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。