森友学園報道のスクープ報道で安倍政権に忖度!? NHKを退職した記者が語る「報道の危機」

報道局長が介入してきたNHKの森友報道

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相澤冬樹氏

「日本の報道は、危機的状況にあります」  NHKの報道記者として、森友学園問題のスクープを連発した相澤冬樹氏はこう語る。相澤氏はNHK大阪放送局で司法キャップなどを務め、昨年8月に退職した。  相澤氏は「森友学園に売却された国有地だけが価格を開示されない」というニュースの原稿を書く際、「この土地に建つ小学校の名誉校長に、安倍昭恵首相夫人が就任している」という内容も冒頭に書いたが、デスクの判断でこの部分を削られてしまう。  そしてこのニュースも、その後の「国有地払い下げに際して、8億円もの大幅な値引きがされていた」というニュースも、関西圏だけでしか放送されなかった。 「その後も、私が関わったNHKの森友報道では、『クローズアップ現代』や『ニュース7』などの番組で、人事権を振りかざした露骨な圧力がありました。全国のNHK報道部門のトップである報道局長が介入してきたのです。安倍官邸に忖度したのだと思います」  2017年6月には「近畿財務局が国有地の売却前に、森友学園が出せる具体的な金額を聞き出し、実際にその金額以下に値引きして売っている」という情報を入手。相澤氏は取材を進めて確証を得たが、一向に報道される気配はない。「報道局長を説得するのが難しい」のだという。  そこで相澤氏は「大阪地検特捜部もこの情報を把握して捜査している」という情報を付け加え、7月26日の『ニュース7』でやっと報道することができた。「近畿財務局が森友学園の都合に合わせて価格を決めていた」という、背任行為を強くうかがわせる大スクープだ。

報道局長賞の受賞と同時期に記者職から外され、NHKを退職

取材イメージ「そのニュースの放送から3時間ほどたってから、激怒した小池英夫報道局長が、私の上司である大阪のA報道部長の携帯に電話をかけてきたんです。私はたまたまA部長の目の前にいました。『私は聞いていない』『なぜ出したんだ』と、私にも聞こえるくらいの大声で怒鳴られていました。  社会部長が説明したはずだから、聞いていないはずはない。きっと社会部長はニュースを通すため、わざと重要性がわからないように説明したのでしょう。それで、報道局長は『そんな重要なニュースだとは聞いていない』と怒っていたのだと思われます。  電話を切った後、『あなたの将来はないと思え、と言われちゃいましたよ』とA部長は言いました。しかし私は『それは私のことだろうな……』と思いました。  もうひとつ、この時におかしいなと感じたことがあります。それは、報道局長が電話をしてきたのが、ニュースから3時間ほどたっていたことです。もしもニュースを見て激怒したのなら、ニュースが終わった直後に電話をしてくるはずですよね。  ではこの3時間のタイムラグは何なのか? おそらく自分でニュースを見て激怒したのではなく、ニュースを見た“他の誰か”が激怒して、報道局長に何かを言ってきた。報道局長はそれを受けて私の上司に電話をしてきたから、時間がかかったんでしょう。  では、“他の誰か”とは誰でしょう? NHK内部の人ではないでしょうね。報道局長は報道部門のトップですし。小池報道局長が安倍官邸の人たちと近いことは、よく知られています。そこから圧力があったんだろうなあと私は推測しています」  相澤氏は森友事件に関するスクープ報道でNHK報道局長賞を受賞。それと同時期に、社内の人事異動で記者職から外されて「考査部」に移されることになる。 「私はNHKで31年間、記者を続けてきました。これからも生涯、記者でいたいと思っていました。しかも森友事件の取材の真っ最中に、担当していた記者を外すというのは信じられません。報道局長賞の受賞も同時期でした。  民主党政権やその前の自民党政権でも“政権の意向”というのは感じましたが、安倍政権になってからは露骨に政権の意向を忖度するようになりました。もうここにはいられないなと思い、退職しました」
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