前出の代理人・加藤弁護士は今回紹介した被害者を含め、10人以上から相談を受けている。
弁護士・加藤博太郎氏
「被害者の証言から、徐々にスキームが明らかになってきています。被害者の入り口は交流パーティやセミナーなどさまざまですが、そこには“営業マン”的な人物がまず配属されている。そして、スルガ銀行の行員と仲が良く、金融の知識もあるN氏がクロージングをするというわけです」
営業マンは先に被害者として紹介したDさんのようなケースもあれば、正体不明の「投資コンサルタント」と名乗る人物が関与した場合もあることが取材でわかっている。
「ひとつ確実に言えるのは、非常に古典的な投資詐欺にもかかわらず、被害がこれだけ大きく広がったのは、スルガ銀行の現役行員が詐欺師とタッグを組んでいたからにほかなりません」
加藤弁護士は、本件ではN氏からM氏に融資額の10%がキックバックされていた疑いがあると指摘する。スルガ銀行では他の支店においても、行員がコンサルタントと称する人物と組んで不正融資を行い、10%のキックバックを受け取るのは常套手段だったと現役行員が加藤弁護士に証言しているという(スルガ銀行広報室は、本件でも他の支店でも「キックバックを行っていた事実は確認されておりません」と回答)。
加藤弁護士はこう憤る。
「今回の件で最も許せないのは孤独で出会いや社会との繫がりを求めている人や、離婚問題を抱えている人、メンタルの弱い人など社会的弱者を狙い撃ちし、限界まで追い詰めていること。生きづらさを抱えている人の心の隙間につけ込み、友達や恋人として近づいて大金を騙し取っていく。非常に悪質です」
こんな犯罪がまかり通っていいわけがない。
【加藤博太郎氏】
弁護士。東京弁護士会所属。投資詐欺の救済案件、集団訴訟(原告側)などを手がける
取材・文/中山美里(オフィスキング)
― [スルガ銀行]詐欺関与の全貌 ―