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賃貸アパート大手レオパレスに続き、ダイワハウスも建設した戸建て住宅や賃貸共同住宅など計2078棟で施工不良であることが明らかになり、住宅業界は混迷を深めている。
新刊
『たしかな家づくり』(若葉文庫)を上梓した日本建築検査研究所の岩山健一氏(一級建築士)は「自社の建物に問題があることを認識していながら、問題を改善しようとしなかった点において悪質と言わざるを得ません」と企業としての対応を批判する。
岩山氏はこれまで約3000棟を超える欠陥住宅を検査してきたエキスパートだ。確かに内部から報告が上がっていたにもかかわらず、その問題を解決しようとせず、隠蔽しようとしたことで世間から批判を集めている。
ダイワハウスは柱や基礎に不適切な部位があり、「型式適合認定(型式認定)」に不適合だったことが発覚した。自社基準で不適合と認定した2078棟のうち、2066棟に建築基準法違反の恐れがあるという。
ダイワイハウスは型式認定を受けた仕様を、設計者が十分に確認せず設計したのが原因と説明している。本来の仕様と異なる場所に柱がなくなっていたほか、基礎の形状や高さが違うなどの事例があった。
防火安全性が不十分な恐れのある73棟については改修工事をするとしているが、型式認定が適合外だった約2000棟は「建築基準法の範囲内」として補修などを行っていない。岩山氏はこう指摘する。
「戸建て住宅の鉄骨系を手がける大手ハウスメーカーは型式認定を採用しています。それらは全国に支社やフランチャイズを持ち、年間千棟規模で供給しているのですが、型式認定というシステムそのものに問題があります。
型式認定の住宅は建築基準法の最低基準をクリアされておらず、適合外の住宅が『建築基準法の範囲内』であるはずがありません。型式認定制度そのものが欠陥を生み出す諸悪の根源なのです」
では、型式認定とはどういうシステムなのかを説明していきたい。そもそも建物は、建築基準法や関連法規に合致しているかを確認しなければならない。これを「建築確認」と呼んでいる。建築基準法はこの確認申請によって最低限の基準を確保している。
だが型式認定は、建築基準法に定められた規定以下の仕様であっても「一定以上の安全性が確認できた」として国土交通大臣が認定するもの。その制度を鉄骨系ハウスメーカーが同様の形式の家を量産し、量販することを目的に各社が利用している。
建築部材が工場で大量に生産され、同一の型式で量産される建築物や標準的な仕様書で建設される住宅が一定の建築基準に適合しているかどうか、あらかじめ審査して認定を受けておくことで、個々の建築確認や検査時の審査を簡略化することができる。
ハウスメーカーが自社で実験や計算などをすることで安全が確かめられれば、建築基準法で定める仕様規定を下回ったとしても国土交通大臣が認定を与えるというものだ。いわば、建築基準法の最低限の基準すら満たさない住宅にお墨付きを与えるのが型式認定なのだ。
「鉄骨構造というものは、2階建て以上はすべて構造計算をしなくてはならないのですが、この型式認定さえ取得してしまえば、いちいち計算書を提出する必要がなく、法律で定められた水準以下のスペックでも容認されてしまいます。事前に認定を受けておくことで、鉄筋の入っていない基礎や薄くて細い鉄骨の使用が認められてしまう可能性も否定できません。
私はこの工法を『合法的な手抜き工事』と呼んでいます。鉄は自由な形状を作ることができるので、工場生産でのプレファブ化に適しています。ハウスメーカーにとって量産体制に対して非常に都合が良いと言えます」(岩山氏)
また岩山氏によると、自社の基準で安全性を確認されたとする書類が外部に開示されることがないため、「本当に安全かどうか、一般消費者に分からずブラックボックス化している構図がある」と指摘する。
「かつてニチアスいう建材メーカーは外から見えない内側の材料を水に浸し、燃えにくくした建材でありながら、耐火認定試験を合格していました。試験を受ける建材メーカー側が用意した実験セットを使うので、容易に不正をすることができるのです。工法を認定する肝心の制度そのものが、信頼をおけるものでないのです」(岩山氏)