「中規模書店」で相次ぐ経営危機――大都市近郊でも増える「書店ゼロエリア」

複合書店の先駆け的存在――全国大手の「文教堂」も経営再建に

 一方、6月より私的整理を開始した「文教堂グループHD」の中核企業「文教堂」は1949年12月に神奈川県川崎市の溝の口駅前で「島崎文教堂」として創業。1993年11月に現在の社名に変更、1994年7月に株式上場した。
文教堂溝ノ口駅前店

文教堂の創業地・ノクティに出店する文教堂溝ノ口駅前店。駅前に2店舗を構える

 同社は1990年代まで首都圏地盤の書店チェーンであったが、1999年8月に国内最大級(当時)となるインターネット書店「J-BOOK」を開設、2000年10月に北海道地場大手書店「本の店 岩本」、2002年9月には化粧品大手「ポーラ」傘下の書店「ブックストア談」を買収するなど、全国展開を本格化。2003年からは新業態「文教堂ホビー」(B’s Hobby)1号店を出店しプラモデル・模型専門店に参入、2005年4月には複合書店大手「ゲオ」との包括的業務提携を締結、また当時中堅コンビニであった「スリーエフ」と共同で24時間営業書店「文教堂スリーエフ」を出店(2019年現在は一部店が「文教堂ローソンスリーエフ」として現存)するなど、出版業界の市場縮小に対応した事業多角化を進めていた。
文教堂ホビー

模型などを専門に取り扱う「文教堂ホビー」(福岡市)

 業界に先駆けて事業多角化を進めた文教堂であるが、同時期より競合書店チェーンとの競争激化もあり、経営不振の常態化が顕著にみられるようになった。

2008年から経営再建を実施していたが……

 経営再建の一環として、2008年3月に純粋持株会社化を伴う機構改革を実施、2008年12月から2009年3月にかけて取次大手「トーハン」を中心に取引先を対象とした総額10億円超の第三者割当増資を相次ぎ実施、不採算店舗を閉鎖することで、経営安定化を図ったほか、2009年9月には大日本印刷(DNP)傘下の書店大手「ジュンク堂書店」(現・丸善ジュンク堂書店)が筆頭株主となり、同年12月に業務提携を締結、DNP主導のインターネット書店「honto」への参画や、丸善ジュンク堂および親密な関係にある喜久屋書店への「文教堂ホビー」出店を進めるなど、事業の合理化を目指した。  なお、2016年10月の丸善ジュンク堂書店による取次大手「日本出版販売」(以下、日販)への間の全株式譲渡により、現在は日販が筆頭株主となっている。
「文教堂」と「丸善ジュンク堂書店」が共同出店する大型店

「文教堂」と「丸善ジュンク堂書店」が共同出店する大型店(長野県松本市)。
MARUZEN・animega・JOYの看板が並ぶ

 2011年9月には、次世代の主力業態としてアニメ・コミック専門店「アニメガ」1号店を武蔵境駅前に出店。  さらに、ホビー業態との複合店舗「文教堂JOY」を立ち上げ、都心部の駅ビル・ファッションビルや大手雑貨店「ロフト」を中心にサブカル系店舗の多店舗展開を開始した。  2014年11月には関西地盤の中堅書店「キャップ書店」8店舗を取得、既存店舗のリニューアルを進めるなど事業再構築を目指したが、2013年8月期以降は再び赤字が常態化(2017年8月期除く)しており、2018年8月期には約2億3000万円の債務超過、東京証券取引所による上場廃止に係る猶予期間入りの指定を受けていた。  文教堂グループHDは債務超過解消に向けて、本部・店舗間の意思疎通改善や退店基準明確化による不採算店舗撤退といった経営改善策を実施。創業家出身の嶋崎富士雄社長も退任し、買収した「本の店 岩本」出身の佐藤協治常務が後任に就いたが、2019年8月末までに債務超過解消が困難であることから、6月に私的整理の一種である事業再生ADRの申請に至ったという。同社は既存店の営業を継続しながら、金融機関借入金(約135億円)の返済猶予交渉を行うなどして、上場廃止回避に向けた経営再建を目指すとしている。
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大都市近郊でも「書店ゼロ」エリアが
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