子どもがいると、面会交流の問題もある。家裁は、夫婦間の問題と親子の問題は別問題と言い張る。家裁の見解は、家族が相互に影響をし合っていることを無視している。母が父からイジメられていることを目撃している子は、心が傷つけられ、トラウマを負う。面前モラが続くと、脳が損傷し萎縮し、その後の心身の成長に重大な悪影響を及ぼす。
面前モラ、面前DVがあっても、子が面会を嫌がっていても、家裁は、面会を強力に推進する。
私は、これを
面会原理主義と呼んでいる。子と同居している母が面会を拒否すると、家裁調査官による「意向調査」が行われる。
約2時間、同居親は、調査官との個室面談を強要される。意向調査では、面会交流に応じない理由を繰り返し問われ、面会交流の意義が延々と説かれ、どのように面会交流を行っていくかを執拗に訊かれる。つまり、圧迫面接である。
或るモラ夫は、別居後、1歳の子との面会を執拗に要求し、妻は面会に応じた。しかし、子どもに声をかけることも、抱き上げることもなく、1時間程、妻に話し続けた。このモラ夫は、離婚に反対し、再同居を求めている。
ところで、別居後の「育児」への関与等のため、離婚後共同親権への法改正が提案されている。これは、いかにも危険である。様々な場面で、元夫の同意が必要になる。
元夫が、進学先や普段の生活での自分の意見を通そうと、元妻の家庭に介入することは目に見えている。子ども部屋の点検を要求するかも知れない。つまり、離婚後共同親権は、モラ(元夫)の支配のツールになる。
夫と縁が切れるならば、財産分与も慰謝料もいりません
さて、冒頭の女性は、数か月間迷った末、別居、離婚を決断した。離婚条件を尋ねたところ、財産分与も慰謝料もいらないという。
「今後の生活もあるし、財産分与も慰謝料もあなたの権利ですよ」と説得したが、夫が怒るのが怖い、一日も早く、夫と縁を切りたいという。
この妻は、非正規で働き、月給は10数万円である。家賃、水光熱費を払うと殆んど残らない。他方、年収約1000万円の夫は、「離婚理由が分からない。(妻は)頭がおかしくなったのではないか。精神科医に診てもらってほしい」と述べた。
何が妻を追い詰め、結婚生活を破綻させたのか、余りに明らかであろう。
<文/大貫憲介>