「病院に連れて行ってほしい」と頼むと、入管職員は「まだ死んでいない」と拒否をした

家族面会はわずか30分、娘を抱きしめることもできなかった

会見中、泣き出すフセインさんの妻

会見中、泣き出すフセインさんの妻

 フセイン・イシリさんの妻もこの会見に参加した。  当初は、家族の顔と名前を出すことを躊躇していたが、あまりにも夫の解放が長引いているので、覚悟のため会見の場に顔を出した。フセインさんは現在、食事がとれずに砂糖水を口にしている。職員に「頑張って食べろ」と言われたそうだが、食べてもどうしても戻してしまう。最近は「砂糖水ですら辛い」と語っている。  収容されて1年半が経ち、やっとアクリル板で隔てられることのない家族面会を果たせた。しかし長い間離れ離れだったことで、いざとなると2歳の娘はフセインさんに対し、人見知りをして泣き出してしまった。  やっと実現できた家族面会だったが、娘を抱きしめることができず、かなり気落ちをしてしまった様子だった。  筆者との面会で、ますます痩せて骨と皮だけになったフセインさんは「(家族面会が)30分じゃ、何もできない。せめて1日、時間があれば……」と悲しそうにつぶやいた。フセインさんの妻は会見で、悲しさのあまり泣き出す場面もあり、そしてこう語った。

今もなお続く入管の長期収容

「夫は2か月前から1人部屋。40日も前から食事をとっていない。娘が病気になると、私は日本語ができないから大変。毎日、面会して辛い。人間として、私の立場になって考えてみてほしい。私たちは何も悪いことしていない。みなさん、お願いします。普通の家族になりたい。難民と認めない、人によって収容の期間が違う。それなら難民(条約)をやめてほしい」  大橋弁護士は「トルコの、(クルド人に対する)現在の状況は悪化している。見直してほしい」と主張する。入管の長期収容は、現在も頑なに続いている。あまりにもひどい扱いに対し、顔も名前も出し、立ち上がる当事者も少しずつ増えてきている。あまりにも人道を無視した入管のやり方も、そろそろ限界に近づいているのではないだろうか。
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)など。入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)を2月28日に上梓。
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