香港で感じたデジャヴ。抵抗する民を抑圧する者の同一性<大袈裟太郎的香港最前線ルポ3>

「抑圧者」たちはいつも一緒だ

 香港警察の横で30名前後の小規模な集会に出くわした。なんとなく怪しい匂いがしたので近づくと、条例案賛成側の集会だった。 「香港工商総会」という団体が、警察署に「暴徒鎮圧おつかれ様です」的な花を寄贈するのだ。
条例案賛成側の集会

条例案賛成側の集会

条例案賛成側の集会

警察署に送る「暴徒鎮圧おつかれ様です」的な花

 ああ、沖縄でもいるね、、、反反基地運動「警察、米軍お疲れ様」的な人々、、、中国バンザイ勢と日本バンザイ勢、両者は明らかに似た雰囲気を醸し出していた。両者は大国におもねる国家主義者。一見、対立する存在のように見えて、その実、最も親和性が高いように思う。  そこを切り裂くように、ひとりの若い女性が親指を下げながら通り過ぎた。黒いワンピースのなんともカッコイイ後ろ姿だった。  これは圧倒的な世代間闘争でもあるのかもしれない。
法案賛成派の集会を親指を下げて通り過ぎる女性

法案賛成派の集会を親指を下げて通り過ぎる女性

「ピクニックに行こう」

 デモを主催した若者たちは、この日、香港警察へ赴き、12日の暴動認定の取り消しと、警察の暴力の謝罪、逮捕された11名の釈放を要求したが、交渉は決裂、香港警察はゼロ回答だった。  火がつきそうな対立はいまだに続いていた。  香港立法会への立体回廊にはこの夜も切ないメロディアが響いていた。  近くのケンタッキーは黒い若者で埋め尽くされ、店員はものすごい勢いでチキンを揚げ続けていた。
賛美歌を歌う若者たち

この日も立体回廊には賛美歌が響いていた

黒い服の若者で埋め尽くされた回廊

黒い服の若者で埋め尽くされた回廊

 僕はメディアパスを使い、立法会側に入り、ガンガン写真を撮りまくっていると、ものの3分で香港警察に囲まれた。 「あなたはもうenough(充分)撮影した。あなたの安全のためにここを立ち去れ」  これもまったく同じことを辺野古や高江で言われたことがあるのだった。充分かどうかはこちらが決めることだ!と言い返した記憶が蘇る。  危ないですよ、危ないですよ、と言いながら掌底をぶち当ててくるのも日本の警察だった。あと、僕のゆうちょ口座が凍結された時の郵便局側のアナウンスも「あなたの安全を守るためです」だった。  この欺瞞に満ちたやり口。  やはり、市民を弾圧するためのマニュアルは、警察権力や世界の為政者の間で共有されている気がしてならない。  立法会周辺は深夜になっても、黒の若者たちが途絶えずに断続的に(ピクニック)をしていた。朝までいた者もいるだろう。  SNSに「立法会にピクニックに行こう!」とだけ書かれた暗号めいた画像が拡散されていたのだ。
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「明後日」が来るのが怖かった
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