管理体制に不安を抱える集合住宅の末路<競売事例から見える世界34>

自主管理が上手くいった例はほとんどない

 また、小規模集合住宅では、このような管理体制への移行という事例もある。 「自主管理」  管理会社を入れず、住民である自分たちが管理を行うというものだ。  管理費と修繕積立金が大幅に安くなるというメリットもあるが、結局は管理事態が放棄されていたり、「誰かがやってくれるだろう」と先送りにされていたり、「自主管理」が見事に機能している物件にはまだ出会ったことがない。  中にはこの「誰かがやってくれるだろう」の「誰か」を買って出た“善意の”管理人に長年自主管理物件を任せっきりにしていたところ、彼の死後に管理費の全額使い込みが発覚し、残された住民には為す術がないという事例もあった――。  マンションを始めとする集合住宅の「管理」に関しては、住民の代表組織である「理事会」も岐路に立たされる。  一般的に理事会への参加は公平を期し、戸数分の住民全員が輪番制により役員を担当することになっているが、この理事会当番がまわってきても、頑なに参加を拒む住民が台頭し始め、彼らとの向き合い方が大きな争点となっているのだ。 「有料で役員への参加を断れる」、「役員参加者には相応の報酬を出す」といった新たな制度を導入するマンションに触れたこともあるが、いずれの制度も特効薬と言えるほどの効果を生んではいないようだ。  もちろん「強制」という制度の限界、そして「多様化」の受け入れが大きなテーマになるご時世にあるとは言え、分筆されていない一つの土地に建つ物件を分譲購入している以上「協調性を欠いて良いわけではない」この点を今一度示すべきではないだろうか――。

競売でも「問題点」が取り沙汰されてきた

 これまでは「売りやすい」として競売物件の中でもブローカーの札が入りやすかった首都圏のマンション。  元号が「令和」へ切り替わるのと時期を同じくして、ブローカーが入札基準を大幅に絞ったためか、立地や築年数、管理体制に不安のあるマンション競売物件への入札状況が一気に鈍化した。  市場にもマンションを始めとする「集合住宅の問題点」を現実的に捉える動きがようやく広がってきた印象を受ける。  これら一連の流れは単に加熱しすぎたマンション価格の調整といった局面なのだろうか、それとも不動産バブルの崩壊、そこから続く長期下降トレンドへの扉がゆっくりと開き始めたということなのだろうか。
全国の競売情報を収集するグループ。その事例から見えてくるものをお伝えして行きます。
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