管理体制に不安を抱える集合住宅の末路<競売事例から見える世界34>

分譲マンションイメージ

住民を悩ますのが、マンションの管理問題だ(※写真と本文は関係ありません)

老朽化した分譲マンションが直面する現実

 マンションを始めとする集合住宅の「管理」という問題が住民に重くのしかかっている。  1970年代以降、市場に大量供給された分譲マンション。かつては羨望の眼差しで見られた存在ではあるのだが、今や減りゆく住民に増えゆく独居高齢者、孤独死、相続放棄、嵩む管理費・修繕積立金、拒否される理事会への参加と様々な問題に晒されている。  差し押さえ・不動産執行の現場でもマンション管理費滞納による執行は定期的に発生しており、これらの滞納金は競売で購入者が現れた場合、購入者が負担することになる。  とは言え、これも“購入者が現れた場合”の話。  競売入札開始価格の下限である1万円でも購入者が現れないという現象は、既に遠い地方都市だけの話ではなくなってしまった――。  本来マンションなどの集合住宅は“利便性の高い立地”という土地の恩恵を、多くの人が受けられるためにあるべきなのだが、バブル期建造のものともなるとこのような理念を全く感じさせない土地柄にポツンとそびえ立つものも少なくない。  そして、今回言及する物件もこの例に漏れない。  建築計画段階には当該物件付近までの鉄道延伸計画もあったようで、「駅が出来れば値段が跳ね上がる可能性」といった口頭宣伝もあったようなのだが、バブル崩壊と同時に鉄道延伸計画も頓挫となり、挙句の果てには自殺の名所という汚名まで着せられることに……。

コロコロ変わる管理会社

 いつしか我々不動産執行人もこのマンションの“常連客”となってしまった。  マンションを始めとする集合住宅への執行では、管理会社からの委託を受ける管理人とのやり取りが発生し、今回のような不動産執行常連組マンションの管理人ともなれば、応対もスムーズで手慣れたものだ。  だがこの日は「執行ってなんですか?」「管理会社を通してください」と妙に不慣れな様子であったため事情を聞いてみる。 「実は管理会社が変わりまして、私も来たばかりなんです。こういった対応をするのは初めてでして……」  マンション住民が主導する理事会が特別決議を経て、管理会社を変えるという事例に出会うことも増えつつある。  マンション住民に迫る管理費負担増という不安を背景に、管理会社も低価格を売りとした営業攻勢を加速させているということなのだろう。
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自主管理が上手くいった例はほとんどない
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