お経を唱えるベトナム人尼僧のティック・タム・チーさん
技能実習生、留学生の死亡が異常に多い。法務省は、2012~17年に171人の実習生が亡くなっているというが、実数ははるかに多いはずだ。彼らはなぜ死んだのか。遺族はどのような思いなのか。
『月刊日本』7月号では、このまま行けば日本人と外国人の対立を煽り、社会の分断をも招きかねない現状に警鐘を鳴らすべく、「どうなる! 外国人労働者問題」と題した特集を組み、外国人労働の最前線にいる人々に話を聞いている。
同特集の中から、不幸にして亡くなった技能実習生や留学生の死者を弔う在日ベトナム仏教信者会会長の尼僧、ティック・タム・チーさんと、同会の拠点である浄土宗寺院「日新窟」(東京都港区)の尼僧、吉水慈豊さんに話を聞いた記事を転載し、紹介したい。
月刊日本7月号
―― タム・チーさんは技能実習生や留学生の死者を弔っています。
タム・チーさん(以下、タム・チー):私は2001年に来日して大正大学で大乗仏教を学び、2009年から日新窟で在日ベトナム人の信者と関わってきました。2012年からは技能実習生、留学生の葬儀も行うようになり、現在までに
100名ほどの方々を弔ってきました。彼らの水子も20名ほど供養しています。これまで実習生、留学生の葬儀は毎月1件程度でしたが、昨年からは毎月3~5件に増えています。
昨年は40名、今年は現在までに15名の方々の葬儀を執り行いました。みんな20~30代の若者ばかりで、連絡を受ける度に「また?」「なぜ?」と疑問を感じています。
実習生や留学生は
病死、事故死、自殺など様々な理由で亡くなっています。心不全や脳梗塞で亡くなった方、建設現場で実習中に転落死した方、不法就労中に漁船から転落して溺死した方、職場で「
暴力やいじめがあってつらい」と遺書を残して首を吊った方……。
日本に夢や希望を抱いてやって来た若者たちが、なぜ、こんなに死ななければならないのでしょうか。
―― 葬儀の過程はどのようなものですか。
タム・チー:まず亡くなった方の友人から電話やメールで「葬儀をしてほしい」と連絡が来て、それからベトナム本国の家族に連絡します。家族の来日を待ってから荼毘に付し、葬儀を行います。
家族の方々は遺体にすがりつきながら泣いています。境遇によって家族構成は様々ですが、まだ若い奥さんや幼い子供がいる方も少なくありません。
中には、金銭的な事情から日本まで駆けつけられない家族もいます。そのため、葬儀の様子をインターネット上の動画で中継することもあります。家族だけではなく友人や知人も画面越しに参列し、様々なコメントを書き込んでいます。