改正児童虐待防止法で本当に虐待は減るのか?
法改正が遅すぎたのではないか
この間、体罰禁止を法律に盛り込んでこなかったのは遅きに失する。せめて10年前に罰則規定のある体罰禁止が法制化されていたら、殺されずに済んだ子どももいたはずだ。小さな子どもが何人親に殺されたら、まともな改正を行うのだろう。
心理的虐待への対策も練るべきだ
これは、2004年に児童虐待防止法の改正によって父母間の暴力を子どもが見たら「面前DV」として心理的虐待にあったとみなすことを明記し、警察もこの改正を受け、面前DV案件として児相に通告することになったからだ。
心理的虐待は自尊心を殺し、子どもの成長と共に精神病や自殺企図、自己評価の低さなどの生きずらさをしみこませ、子どもが一生苦しむことになる。本来は、数の最も多い心理的虐待の解決にも踏み込むべきだったのではないか。
日本小児科学会は2016年、虐待で死亡した可能性のある15歳未満の子供が全国で年間約350人に上るとの推計を発表したが、これは厚労省の集計の3~5倍に上る。厚労省の発表できる数字は、氷山の一角でしかない。児相に保護されても、児童養護施設に移送されれば、学費不足で大学進学をあきらめてしまう子もいる。
政治家には、本当に切実な課題にメスを入れることに予算を割き、不都合な現実に向き合ってほしい。子どもは有権者ではないからこそ政治的な不遇にあっているし、子どもの人権は政治家の利益のために利用されては困るのだから。
筆者は、子どもの前で「今回の改正は一歩前進」などとは、とても言えない。
<文/今一生>フリーライター&書籍編集者。
1997年、『日本一醜い親への手紙』3部作をCreate Media名義で企画・編集し、「アダルトチルドレン」ブームを牽引。1999年、被虐待児童とDV妻が経済的かつ合法的に自立できる本『完全家出マニュアル』を発表。そこで造語した「プチ家出」は流行語に。
その後、社会的課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスの取材を続け、2007年に東京大学で自主ゼミの講師に招かれる。2011年3月11日以後は、日本財団など全国各地でソーシャルデザインに関する講演を精力的に行う。
著書に、『よのなかを変える技術14歳からのソーシャルデザイン入門』(河出書房新社)など多数。最新刊は、『日本一醜い親への手紙そんな親なら捨てちゃえば?』(dZERO)。
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