蓮池透氏と見る四国・伊方発電所。蓮池氏も驚愕したその立地とは?

蓮池透さん八幡浜に来たる

 6月10日の14時に八幡浜港の道の駅みなっとで合流と連絡があり、蓮池氏、主催者側の女性二名と合流、お茶のあと私の15万キロ「へこみデミオ」で出発です。天気は予報を裏切り快晴でした。あちこちへこんで割れている私の「へこみデミオ」に「これ大丈夫かしら」という声が聞こえます。失礼ね!  私が知る、2002年ころと違い、蓮池さんはずいぶん物静かで穏やかな方です。かつてのとんがった感じが全くありません。一瞬、ボディスナッチ(Invasion of the Body Snatchers (1956); ボディ・スナッチャー/恐怖の街)されたのかと思いましたが、紛れもない蓮池透さんでしょう……。たぶん。  八幡浜のホテルでチェックインを済ませ、「へこみデミオ」で出発し伊方町役場を見たあと、伊方発電所に向かいました。伊方町役場の威容は、刈羽村など原子力発電所立地自治体に共通するもので、この先どうやって維持するのだろうかという話になりました。もはや商用原子炉の新規建設は政治的にも経営的に不可能なため、伊方発電所は残り15年、延長して35年の残り時間で、財源としては急速に細ってゆきます。なお現在伊方町への電源交付金は、18億円、八幡浜市へは5000万円です。伊方町の人口は、1万人弱となっています。31年後の2050年には、悲観的予測では5~6千人程度に減少していると考えられます。社会の維持のために伊方発電所の次は必須なのです。

伊方発電所裏側

 まずは伊方3号炉に最接近できるお気に入りの場所に到着しました。伊方発電所前に集まって30年以上の古参の方でも知らない場所です。私は、原子炉好き好き人間なので、伊方通いをはじめてすぐに見つけました。養蜂業者がいつも巣箱を置いており、ミツバチがブンブン飛んでいますが、ガードレールのない県道の旧道が通っており、到達は容易です。  古参の方にこの場所のことを言うと、「射殺されるよ」などと真顔で言われますが、敷地境界ははっきりしており、また旧道の敷地境界杭などを調べた限り公有地と思われます。  私が知る限り、運転中の大型商用原子炉に500m以内まで接近できるのは、日本ではここだけでしょう。
伊方発電所を見る蓮池さん一行

とっておきの場所から伊方発電所を見る蓮池さん一行2019/6/10牧田撮影
東京電力ではあり得ない、構外から見えるド迫力の原子炉施設に絶句

 蓮池さんによると、まず海を除く外部から原子炉ほか重要施設が見えることが他になく、しかも500m程度まで近づけることが考えられないとのことでした。  また、敷地境界のフェンスがたいへんに簡素で低く、有刺鉄線も巻き数が少ないとたいへんに驚かれていました。はい、この程度のフェンスなら毛布一枚で無力化できます。  敷地内にタンクが多いのはPWR(加圧水型原子炉)の特徴で、PWR系では多くが真水を自家製造しており、真水などを貯めるためのタンクが大量にあります。伊方発電所の場合は、保内分水反対運動*などにより野村ダムの水を含め外部からの水の調達はできていないようです。PWR系では、関西電力宮津エネルギー研究所での実証実験などもあり、原子炉の電力、熱によって真水を製造しています。PWRだけに原子力潜水艦と同じと考えれば良いです。 <*参照:“ミカンと原子力の街、愛媛県八幡浜市で行われた「使用済み核燃料貯蔵施設」のPA講演会|HBOL”  蓮池さんによると、東電のBWR発電所(沸騰水型原子炉)では自前の堰堤(小型ダム)によって河川から発電所へ水を運んでいるそうです。  ここで蓮池さんがぽつりと言いました。これ、特重(特重施設、特定重大事故等対処施設)どこに作るんだろう? はい、私にも分かりません。狭いんですよね。  この頃になると、蓮池さんはとても快活に話されています。よかった、昔の蓮池透さんです。ボディスナッチされていませんでした。
伊方発電所

同地点から見る伊方発電所。3号炉(左)と1号炉(右)がみえる 2019/6/10牧田撮影
撮影地点から原子炉まで400〜450mで携行用対戦車ミサイルが余裕で届きます

1号炉

1号炉を望遠で撮影 2019/6/10牧田撮影
1号炉の手前右付け根にあるパラボラのある小さな建物が、緊急時対策所。免震重要棟に耐震性の不足があったために代替設備として建設。本来は過酷事故時の最後の砦であるが、耐震棟にすぎず、非常に規模が小さい。トイレもひとつしかないとのこと

3号炉

3号炉全景 再稼働前の2016年3月27日牧田撮影
3号炉の後ろに2号炉が隠れている。後方に1,2号炉の補助建屋で制御室がある。ドームに張り付いているイモムシみたいなものは排気筒。PWRは建屋が巨大で、3号炉は高さ80m以上ある。お気に入りの一枚

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土石流対策で四国電力が講じた仰天対策
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