正社員:「でも俺は、広告代理店の人とかは、このシーンではお金を儲けられないと思うんですよ。MCバトルが好きじゃないから」
呂布:「MCバトルもいろいろなことが言われていますけど、根本のところはやっぱり音楽なんですよね。それで問題なのが、これだけバトルで名前の売れているMCがいて、メジャーデビューした人もいるのに、まだヒット曲がひとつもないこと。いい曲だと言える曲がマジで一曲もないんです。そこが音楽としてものすごく弱いと思う」
正社員:「いい曲っていうのは、要するに売れる曲ってことですよね」
呂布:「そうそう」
正社員:「RIP SLYMEみたいなことでしょ」
呂布:「そう。誰もが知っているような曲がひとつもないからダメなんですよ。だから俺はバトルで有名になるだけでなく、ちゃんといい曲を作って、売れていく道筋を作らなきゃいけないポジションにいると思う。でも今のヒップホップのメインの流行りはトラップですよね。トラップってかなり人を選ぶんです。若い人しか聞かないし、バカしか聞かない音楽なので。夏フェスとかでも、クソしょうもないトラップの曲をやるアーティストが、メインのところでワーワーってやってるんですよ」
――海外のラッパーにもトラップが嫌いという人はいますよね。呂布さんはどんなところが嫌いなんですか?
呂布:「オリジナリティーがないし、頭悪いっすよね。もし僕が今10代後半とか20代前半なら聞くかもしれないですけど、少なくとも30代半ばの大人が聞く音楽では絶対ない。だから特別嫌ってるというか、特に好きじゃないのは当たり前のことだと思います」
正社員:「僕も昔はいろんな曲を聞いていましたけど、そのあとはMCバトルのことばかり考えてきたので、ヒップホップの最新の流行とかはわからないんですよね。そういう話にコンプレックスもありますし。ジブさん(ZEEBRA)とかもそういう音源の話をするし、『お前ヒップホップ知らねーな』とか言ってくる人もいるんだけど、別に知らなくていいとも思う」
呂布:「マジで知らなくていいんだよ。アメリカのヒップホップを聞いて、それをそのままやるだけじゃ俺は何の意味もないと思う。『お前らがアメリカのヒップホップを聴いている時間、俺は違うものを聴いてそれを曲に還元してんだよ』と。別に若いヤツが流行に乗って金を稼いで、それを元手に好きなことやろうっていうのはいいと思うんですよ。そこからオリジナリティが出てくることもあると思うし、憧れでやっているだけの場合もあると思うし。30代とかになって、まだそれをやってるヤツは『若気の至りじゃ済まんぞ』という感じで俺は見ていますね」
――やるべきことが別にあるだろうと。
呂布:「ジブさんはそういう流行りものも好きなんですけどね。あの人のよさは、そういうチャラさでもあると思うので、それは全然いいんですよ。いろんなことをやりたいと言って、そこにお金引っ張ってきて、システムを作って、また別のところに興味が移るみたいな。日本のヒップホップの世界の招き猫的な存在でもありますよね。ジブさんにその先まで面倒見てもらうことを求めるのも違うし、いつまでもジブさんに頼り切りなのも問題だと思います」