親と暮らせない子ども、施設より里親のもとで養育を。日本は国連から改善勧告を受けていた

児童福祉法の一部を改正 子どもは保護の対象から、権利の主体へ

 もっとも、遅まきながら日本政府は、2016年6月3日に「児童福祉法の一部を改正する法律」を制定・施行した。 【改正前】 すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない 【改正後】 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する  この改正は、子どもを一方的に支援される対象としていた従来の考えを改め、守られる権利の主体者として位置付けた点で、画期的だった。子どもが児童相談所に保護されたいのかどうかの意思決定の権利者に含まれることを初めて明記したからだ。  このことを逆手にとって、自分が虐待した子どもに虐待がなかったかのような文面を書かせたのが、野田市の虐待死事件の容疑者だった。行政は、「子ども自身の意見をお子さんから直接聞かなければ、私たちは何もできません。法に従って仕事をするのが、私たち役人ですから」と容疑者をつっぱねてもよかったはずだ。  もっとも、国連が示す児童の権利とは、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」であり、「参加する権利」以外がほぼ法律に明文化されたことは特筆に値する。  また、社会的養護は、家庭での養育を優先し、施設での養育は次善の策として定められた。 (1)国及び地方公共団体は、児童が「家庭」において心身ともに健やかに養育されるよう、児童の保護者を支援することとする(児童福祉法第3条の2) (2)ただし、児童を家庭において養育することが困難であり又は適当でない場合は、児童が「家庭における養育環境と同様の養育環境」において継続的に養育されるよう、また、児童を家庭及び当該養育環境において養育することが適当でない場合は、児童ができる限り「良好な家庭的環境」において養育されるよう、必要な措置を講ずることとする。(同法第3条の2)

国連は日本の取り組みを一応評価したものの……。

 こうした改正を経た日本政府が2017年6月に提出した報告書に対して、国連子どもの権利委員会による審査が行われ、子どもの虐待問題への対応強化などを求める「最終見解」が今年2月7日に公表された。  それによると、児童福祉法が改正され、「児童の権利に関する条約の精神にのっとり」との一文を入れたことと、子どもの代替的養育に関して原則、家庭養育が掲げられたことなどは、国連から一定の評価を得られた。  ただし、これは今後の努力への期待を含めた評価にすぎない。日本の社会的養護には、厚労省にとって「不都合」な現実があるのだ。次回の記事で詳しく説明しよう。 <文/今一生> フリーライター&書籍編集者。 1997年、『日本一醜い親への手紙』3部作をCreate Media名義で企画・編集し、「アダルトチルドレン」ブームを牽引。1999年、被虐待児童とDV妻が経済的かつ合法的に自立できる本『完全家出マニュアル』を発表。そこで造語した「プチ家出」は流行語に。 その後、社会的課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスの取材を続け、2007年に東京大学で自主ゼミの講師に招かれる。2011年3月11日以後は、日本財団など全国各地でソーシャルデザインに関する講演を精力的に行う。 著書に、『よのなかを変える技術14歳からのソーシャルデザイン入門』(河出書房新社)など多数。最新刊は、『日本一醜い親への手紙そんな親なら捨てちゃえば?』(dZERO)。blog:今一生のブログ
フリーライター&書籍編集者。 1997年、『日本一醜い親への手紙』3部作をCreate Media名義で企画・編集し、「アダルトチルドレン」ブームを牽引。1999年、被虐待児童とDV妻が経済的かつ合法的に自立できる本『完全家出マニュアル』を発表。そこで造語した「プチ家出」は流行語に。 その後、社会的課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスの取材を続け、2007年に東京大学で自主ゼミの講師に招かれる。2011年3月11日以後は、日本財団など全国各地でソーシャルデザインに関する講演を精力的に行う。 著書に、『よのなかを変える技術14歳からのソーシャルデザイン入門』(河出書房新社)など多数。最新刊は、『日本一醜い親への手紙そんな親なら捨てちゃえば?』(dZERO)。
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