国連「子どもの権利条約」が定める「児童の最善の利益」とは?
こうした取り組みには、児童福祉法という根拠法がある。その第1条には、こう書かれているのだ。
「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する」
「児童の権利に関する条約」(通称:子どもの権利条約)は、18歳未満のすべての人の保護と基本的人権の尊重を促進することを目的として、1989年(平成元年)の国連総会で採択された。日本は1990年9月にこの条約に署名、1994年4月22日に批准し、同年5月22日から効力が生じている。(※条約の全文は、外務省のホームページで)
日本国憲法では、第98条において「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と明記されている。そのため、批准した以上、条約に拘束され、国内法を整える必要がある。
児童の権利に関する条約の第3条には、「児童に関するすべての措置をとるに当たっては児童の最善の利益が主として考慮されるものとする」と書かれているが、「児童の最善の利益」は何を意味するのか?
国連は家庭での養育を推奨、「施設での養育は最後の選択肢であるべき」
2015年8月、東京都議会議員だった音喜多駿氏は、自身のブログで
『実は国連から「子どもの人権侵害」への懸念で勧告を受けている日本』という記事を発表した。
音喜多氏は、条約の前文にある「家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべき」というフレーズを引用し、2010年6月20日の「国連子どもの権利委員会」からの公式な報告書で「親の養護のない児童を対象とする家族基盤型の代替的児童養護についての政策の不足」が指摘されていることを紹介したのだ。
つまり、「児童の最善の利益」とは、施設より家庭での社会的養護を増やすこと。そのための政策を作り、議決することが条約によって求められている。
これは、当時まで諸外国における養護のあり方とは真逆の方針を日本がとっていたからだ。実際、2010年前後の時点では、各国の要保護児童に占める里親委託児童の割合を見ると、欧米では半数以上が里親に委託しているのに対し、日本は10%台で突出して低い水準だった。
2010年5月にユニセフ事務局長に就任したアンソニー・レーク氏は、会議でこう述べている。
「子どもにとっては家庭に基づく養育が最善であり、施設での養育は最後の選択肢であるべきです。ただ単に安全な場所を与えるのではなく、愛情に包まれ支えになってくれる環境こそが、子どもたちにとって大切なのです。こうした環境は、子どもたち自身が持つ力を自ら開花させる助けとなり、やがて社会に貢献する人間に成長することでしょう」(日本ユニセフ協会のホームページより)
この方針に反する日本は、国連から改善勧告を受けていた。だから音喜多氏は同記事で、「我が国は、子どもの人権を侵害する該当国だった」と書いたわけだ。