伊勢丹も入居するタイの商業ビルで火災。タイで火事に遭遇したらどうする?

タイで火災に遭遇したら逃げることを最優先

タイのボランティア消防団

渋滞でバンコクは消防車到着が遅い可能性が高い。ボランティアの消防団も地域ごとにある場合もあるが、残念ながら装備が手薄なことも多い

 バンコクは各所に消防署があるものの、日中はどれほど機能するか不明だ。というのは、バンコクは世界有数の交通渋滞地域であるため、火災発生から消防隊の到着までに時間がかかる。緊急車両を優先してあげる習慣はこの2、3年で定着しつつあるが、バンコクは車線の幅が細く、渋滞中は避けてあげることすら難しい。ということは、我々が火災に遭遇した際にまずするべきことは「避難」しかない。  一応、建物には必ず消火設備はある。それを使って消火活動もできなくはないが、たとえ日本の消防士でもそれは避けたい。半分パニックになっているタイ人と共に、言語を共有していない我々が参加すると足並みが揃わず、より危険が増す。  また、なによりタイは負傷や死亡に対する補償もかなり低い。日本円で100万円も出れば十分かもしれないほどである。それであれば、逃げることが最優先だ。
火災訓練

商業施設やホテルでは従業員が火災訓練を受けてはいるが、練度は低い

 逃げる場合、商業施設なら非常階段などを目指す。最近できたばかりの商業施設はおしゃれに見せるためか、エスカレーターなどが入り組んでいて避難経路が長くなってしまう。施設によるが、バンコクだと階数によっては立体駐車場がビルに横付けされているので、ときには駐車場に出てから逃げた方が早い場合もある。

吹き抜けが多い商業施設は火元から遠くても要注意

吹き抜け

タイの建物は吹き抜けが多く、煙に巻かれやすい

 また、商業施設は吹き抜けが多く、煙が通りやすい。火元から遠いとしても煙に巻き込まれないよう注意したい。血中のヘモグロビンは酸素よりも煙(一酸化炭素)と結びつきやすい。知らぬ間に酸欠になって死んでいることもあるので、ビニル袋などどんなものでもいいので口に当て、低い姿勢で煙を避けなければならない。ちなみに、以前は濡れたハンカチを当てるとされたが、日本の消防庁消防研究センターによれば、濡れたハンカチは除煙効果が低減するという。また乾いたハンカチも一酸化炭素ガスの対策にはならないそうだ。あくまでも緊急措置に使うべきだという。  もしホテルなら非常階段のドアを開ける前に注意しておきたいことがある。まず、ドアが熱を持っていないかだ。熱いときに開けると急激に酸素が流入し、爆発を起こすことがある。また、悪質なホテルの場合、そもそも非常口に鍵がかかっていることもある。これも事前に確認しておきたい。いずれにしても、タイの非常口は開けると警報が鳴る仕組みになっているので、火災時に鳴っても怯まないようにしたいところだ。
密集地

スラムなどは小さな火災が大惨事になることもある

 タイはビルだけでなく、住宅が密集しているエリアも多い。特に観光地の昔の町並みなどは家が木造あるいは古く、かつ密集しているので燃え広がりやすい。タイを観光する際は、どこであっても事前に避難経路や対策を検討しておくべきである。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)> たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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