なぜ、モラ夫たちは結婚後に豹変するのか。その傾向と対策を考える
60歳手前の女性が、私の事務所に相談に来た。
夫が、そろそろ定年退職なので、退職金の半分を貰って、離婚したいという。30数年間の結婚生活をお聞きしたが、夫は、休みの日は何もせず、ゴロゴロしており、いつも不機嫌だった。突然、怒り出すこともしばしばで、家族は皆、はれ物に触るようにしていた。相談者は、子どもが育ち上がるまでと思い、我慢してきた。
結婚後は、夫との楽しい思い出は一つもないと言う。しかし、結婚前、彼は優しかった、相談者の話を良く聞いてくれて、いつもニコニコとして、ユーモアもあった。
その彼が、結婚したとたん、不機嫌な塊となって、いつも怒ってばかりになったという。結婚後しばらくして、相談者が、「あなたは変わった」と言うと、彼から、「釣った魚に餌はやらない」と言われたのが忘れられないという。
つまり、彼は、結婚を機に、モラ夫に変身した。本性を現したというべきかもしれない。彼にとって、結婚とは何だったのだろうか。結婚とは、女性を妻とし、自分の物とすること、妻とは支配の対象であって、もはや機嫌を取る必要はない、そういうことだろう。
別の中年男性は、それまでは、ソフト・モラだったものの、少しは妻に譲るところもあり、2人の子に恵まれ、妻の我慢の下、どうにか「幸せな」家庭を維持していた。
ところが、男性は、部長に昇進するとハード・モラを行うようになった。それまで700万円台だった年収が、部長職になって1000万円を超えた。部下の数も増えた。本人によると、昇進により、「男としての自信ができた」という。
妻に気に入らない言動があると、妻を怒鳴り、説教した。「俺は、外で働いて苦労している」「お前は、養ってもらって楽をしている」と諭した。妻がセックスを拒否すると、夜中でも延々と説教した。モラ強度が「ソフト」から「ハード」に切り替わったのだ。部長昇進から2年後、妻は子を連れて家を出た。