タイ人に人気の「上野」。インバウンド獲得のための地道なPR戦略

ブースごとに差があった注目度

 そんな2月のTITFだが、PRに参加していた日本人の何人かは「前回と比較して来場者数が少ない」という声があった。前回というのはおそらく2018年の8月ではなく、2018年の2月を指していると見る。  ただ、TITF運営側の発表では第24回の来場者数は例年とあまり変わらない、のべ約45万人となっている。2018年8月の第23回は参加者22.5万人、その前の22回目は約45万人だ。タイの場合、学校の夏休みが3月から5月上旬までなので、2月の方が多くなるのは当然の結果であるとしても、実は1年前の第22回と今回の第24回はあまり変わっていない。  むしろ参加企業が第22回は1200ブースが埋まっていたのに対し、24回目は1020ブースに過ぎない。開催期間中の売り上げも22回24回共に5億バーツ(約18億円)で、平均単価としては24回開催の方が上回っていることになる。確かに2011年や2012年は12億、13億バーツの売り上げがあったようだが、近年はこの水準でむしろ悪い方ではない。
「H.I.S.」や「JTB」のブース

「H.I.S.」や「JTB」のブースは一際大きく、人も多かった

 こういった意見が出たのは、ブースの中には日本の自治体も多く参加し、しかし民間企業でないからか誘致の手法があまりうまくないという印象もあったかもしれない。また、タイでも日本の大手旅行業者「H.I.S.」などが強いので、この機会に安く旅行をしようというタイ人たちが殺到してしまい、ほかのブースに来場者が集まりにくかったというのもあったのかもしれない。

インバウンド業界も「お客を待ってる時代」ではない

 ただ、日本旅行関係はいまだ人気なのでまだいい方だ。実際に会場を歩いてみると、韓国などほかの国々も人気とはいえ、日本のブースへの来場者数に比べたら精彩を欠いていたと言わざるを得ない。 「上野NEW伊豆ホテル」や「株式会社オーエイチ」のブースは近隣のブースと比較しても足を止めて展示物の質問をするタイ人が多かった。これからTITFに参加した効果が大きく出ることだろう。日本の観光業界は国内で暢気に外国人が来るのを待っている時代ではない。2月のTITFの活気を見てそう感じた。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)> たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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