タイ人に人気の「上野」。インバウンド獲得のための地道なPR戦略

小規模ホテルでも攻めの集客の時代

 初めての海外PRでは確かに不安が多い。そのため、このように各社が協力し合って活動をすることはよくある。飲食関係の博覧会の場合は日本政府がブースを押さえたり、資本力のある大きな飲食関連企業が借りたブースで参加するということがよくあるのだ。
「株式会社オーエイチ」で

「株式会社オーエイチ」で雇ったタイ人も日本通ばかり

「株式会社オーエイチ」は「Corritrip」といった、新宿や渋谷から草津温泉、奥飛騨などへの高速バスのツアーを中心にしたサイトのPRを行った。2013年に日本の観光ビザがタイ人に対して緩和されて6年。以前の記事「タイ人の間で高まる「日本旅行」熱。所得向上で楽しみ方も変化」で紹介しているように、タイ人は団体旅行ではなく個人旅行にシフトしつつあるので、今まさにこういった安い移動手段を探しているのだ。バンコクはタクシーが初乗りで120円程度、路線バスも30円弱なので、タイ人には日本の乗り物が高いと感じる。そんな中で、タイ人が日本で見たい「雪」、「桜」、「温泉」、「田舎」に安く行ける手段の提案はタイ人のニーズにぴったりだ。
「株式会社オーエイチ」の杉山裕美さん

チラシを配る「株式会社オーエイチ」の杉山裕美さん(一番左)たち

「上野NEW伊豆ホテル」のある上野はタイ人にとって好ましい場所にある。タイからの路線が多い成田空港、羽田空港双方からのアクセスもよく、さらに東京見物をするにも立地がいい。また、なによりもタイ人が注目しているショッピングスポットである「アメ横」も至近である。その点を「上野NEW伊豆ホテル」はチラシの中でも強調した。

あの上野のディスカウントストアも参戦

 そんなチラシは御徒町にあるディスカウントストア「多慶屋(たけや)」のブースにも置かれていた。「上野NEW伊豆ホテル」とご近所ということもあって協力が得られたわけだが、今回は旅行博でありながらリテール関係の注目度も高かった。
「多慶屋」

「多慶屋」は店舗同様の紫で統一

 特にこの「多慶屋」は日本のディスカウントストアの草分けであるだけでなく、いち早く外国人顧客の取り込みに取り組んできた。今では東京のリテール大手は英語、中国語、韓国語のほかにタイ語も看板などに入れるようになっているが、この「多慶屋」はその対応がどこよりも早かった。その効果もあってか、上野を歩くタイ人観光客にこのエリアに来た目的を尋ねると、ほとんどの人が「多慶屋」を目当てにしていたほどである。
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インバウンド業界も「お客を待ってる時代」ではない
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