GW最終日に、文学フリマで本を売ってみた

出店してみた

 いちおう私も小説家の端くれである。小説、プログラム、技術書、マンガと、様々なものを書いているが、文学の末端に連なる人間として、恐る恐る「文学フリマ」に出店してみた。  同イベントでは、同人誌だけでなく商業出版物もOKということだったので、近著の『レトロゲームファクトリー』と、いくつかの同人誌を持ち込んだ。そして長机半分のスペース(一般的な同人誌即売会のサイズ)に本を並べて、11時から17時の開催時間中、手売りで売ってきた。  自分のブースで本を売る傍ら、会場内の全てのサークルブースを見て回った。 本の形態は幅広く、文庫本もあれば、文庫サイズの薄い本、A5サイズなどの本、コピー本、豆本など、色々なものがあった。  同人印刷に詳しくない人に解説しておくと、同人系印刷会社では、書店に並んでいるような文庫本そっくりの本を作ってくれるプランがある。そうしたものを利用すると、見た目の違いがまったく分からない文庫サイズの本を作成できる。カバーだけでなく、オビまで付けられるプランもある。  そのため、同人誌でも商業誌でも、見た目の差はほとんどない。さらに儲けを度外視すれば、箔押しのリッチな本を作ることもでき、その自由度は高い。  本の形態で私が一番印象に残ったのは、名刺サイズの紙に、140文字小説を印刷したものだった。本なのかグッズなのか分からないボーダーラインの作品だが、そうした表現形式もあるのかと思い感心した。  コミケでは見ないような様々なサークルが参加していることについて、コミケと文学フリマ双方に参加している物書き系の知り合いに会えたので聞いてみた。

コミケと文フリの棲み分け

 すると「文学フリマ」には出店するけどコミケには出店しないサークルはけっこう多いそうだ。実際に、自分で全ブースを回ってみた感想として、コミケとはだいぶ雰囲気が違うと感じた。  また、見るからに成人向けの本、萌え系の本が少ないために、同人誌即場会の中では、子供を連れてきてもよさそうなイベントに感じた。実際に、絵本などのジャンルもあり、そうした層も対象になっているのだろうと感じた。  会場内のジャンルの並びは、入り口の左奥が純文学系。そこから徐々にエンタメ寄りになり、右奥が評論系という並びだった。イベント終盤は、左側から徐々に人が少なくなり、評論のところは、最後まで人が多かった。これは、評論系の本の方が、中身の予想が付きやすいという理由があるのだろうと感じた。  さて、以降の説明は、少し同人誌即売会というものを経験した人に寄った話になる。先にお詫びしておき、話を進めていく。  出店者としての細かな感想としては、バックヤード(ブースの背後のスペース)が広く、余裕を持って荷物が置けてよかった。全体的に広々とした机の配置になっていたので動きやすかった。ただ、ブースとブースの間(人が通る通路部分の幅)が広く、来場者が通路の真ん中を歩いて、ブースにあまり寄ってくれないという問題もあった。  売れ行きとしては、私がこれまで参加しているコミケや技術書典ほど売れるわけではなかった。だいたい15~20%という数字だった。ネットで事前に調べた時は「あまり売れない」という感想が多かったので、0~5%ぐらいになるのではないかと予想していたが、そうではなかった。たまたま来場者が多い回に当たったためにラッキーだったようだ。  ただ、私のような零細サークルで初参加の人間の数字は、実際に長く参加している人とは大きく異なるだろう。あと、存外、IT系の人が来ており、技術書典やコミケで技術書を買った人が訪れてくれて、「けっこうIT系の人も文学好き?」と思った。
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イベントへの愛を感じた懇親会参加者
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