グアイドーはこれまでも反政府派の主要メンバーに事前の相談もなく突発的に物事を決める傾向にあったという。また、反政府派の間では彼の決定に反対でも反マドゥロ派の結束を乱さないために沈黙した時もあったそうだ。反政府派でグアイドーより以前から戦って来たエンリケ・カプリレス はそのひとりだ。
米国政府内ではグアイドーに憤慨しているという。せっかくマドゥロ政権の重鎮にインセンティブを与えるという戦術でマドゥロ大統領の倒壊を手中に収める寸前にあったのに、功を焦ったグアイドーが無駄にしてしまったからである。このグアイドーの焦りの背景には、ロペスが影響していたはずだ。(参照:「
El Confidencial」)
マドゥロはキューバに亡命する準備をしていたが、軍事蜂起が彼の政権を揺るがすものでないと判断したロシアがマドゥロにそれをとどまるように説得したらしい。ポンペオ国務長官がそれを明らかにした。(参照:「
El Pais」)
ただ、このポンペオ国務長官についても、ロシアがマドゥロにキューバへの亡命を留まらせたというのは米国の今回のプランが失敗したことを隠すために見繕った嘘であるという憶測が飛んでいる。
さらに、この軍事蜂起失敗の要因について、もう一つの憶測が飛んでいる。
それは、マドゥロ側のキーパーソンである前述の3人以外の「もうひとり」の存在だ。その人物とはディオスダド・カベーリョである。
カベーリョは国民議会の元議長で、現在反政府派の支配下にある国民議会に対抗してマドゥロは制憲議会を設立し、その議長に就任しているの人物である。チャベスが病気で政権を放棄せねばならなくなった時に、憲法の規定によれば、暫定大統領になるのは当時国民議会の議長であったカベーリョであった。ところが、チャベスはマドゥロを後継者にしたという経緯がある。また、カベーリョには軍部でも彼に忠実な軍人も多くいるとされている。
そのカベーリョがマドゥロの政権交代に反対して、彼の配下を動かしてこの軍事蜂起を潰したという憶測もされている。というのは、トランプ政権はカベーリョはベネズエラの軍部の支配によるカルテルのリーダーで、米国の麻薬取締局(DEA)は彼を逮捕して米国で裁くことを強く望んでいる。それを知っているカベーリョは、マドゥロ政権が倒壊すれば彼が身を隠せる場所がなくなると考えて、マドゥロをキューバに亡命させようとするプランを潰す為に工作したと憶測されている。(参照:「
El Espanol」)
今回の軍事蜂起が当初のプラン通り進んでいたならば、蜂起を起こすその同じ日にミケル・モレノ最高裁長官が最高裁を特別に開廷して制憲議会が違法であるという判決を下して、その議長であるカベーリョを拘束し、そのあとパドゥリーノが軍の最高指揮者であり国防大臣という地位から彼を逮捕するというシナリオだったというのだ。しかし、カベーリョに忠実な軍部の一部がそれに従う可能性はなく、寧ろカベーリョを拘束すれば軍部内でパドゥリーノ国防大臣らに背く軍事蜂起が発生して内戦に発展する可能性もあったことが懸念されたという。(参照:「
El Espanol」)