「破産者マップ」で救われる人は、実際にはまずない<競売事例から見える世界31>

破産者イメージ

aijiro / PIXTA(ピクスタ)

破産者マップは弱みに付け込む輩を喜ばせるだけ

 今年3月中旬、官報に記された破産者の情報をマッピングし、検索も可能としたサイト「破産者マップ」なるサイトが現れ物議となった。  サイト運営者の主張としては、そもそも破産者情報は国民が自由に知ることの出来る情報であり、広く周知することで破産者が援助を受けられるという道があるのではとのことだった。  ところが、世論は「プライバシーと名誉の侵害」という指摘に大きく傾く形となり、「破産者マップ」がサイト閉鎖に追い込まれたのは既に報じられている通り。  この当時サイト運営者の語っていた「破産者情報は国民が自由に知ることの出来る情報」「広く周知することで破産者が援助を受けられる道」との主張だが、差し押さえ・不動産執行の現場にいる我々から言わせると、破産者や不動産差し押さえ情報の悪用、弱みにつけ込む追い打ち詐欺は数多くあれど、援助や救いというものはまず無い――。

差し押さえ情報が公開されると、途端に怪しい輩が群がってくる

 差し押さえ・不動産執行の情報として住所や名前が掲示されると、「NPO法人です」「裁判所の方から来ました」「全国なんちゃら協会です」中には旧財閥グループであるような印象を与える企業名を引っさげた業者などが、頼んでもいないのにゾロゾロとやってくる。 「調査させてもらっていいですか~?」と当然のような顔で室内に上がり込んでしまう事例もあるほどだ。  そんな次から次へと頼みもしないのにやってくる業者の大半は「任意売却物件」を扱うもの。  任意売却を簡単に説明すると、債務者および債権者の合意を得て、競売にかかる前に不動産を民間で売ってしまおうというお話。  メリットとして競売より高値がつくという触れ込みがあるのだが、公開されている近年の首都圏取引事例を見てもらえれば一目瞭然、競売での入札価格を上回ることは殆ど無い。  同時にこの取引価格のバランスは、競売人気が既に加熱気味であるということも示している。  競売が人気となっている理由としては公的調査が入るため民間では追いきれない情報もしっかり網羅されるという安心感、昨今では地銀問題もあり築年数が浅い即転売可能物件の多さ、市場価格の7~8掛けという入札開始価格の割安感。このようなものが評価されている。  では何故、入札開始価格の割安感がありながらも市場価格を超えてくるのかと言えば、大きな要因として、そもそも首都圏の不動産需要に対する供給が間に合っていないという点があげられる。  市場に出回る不動産という出物が少ないため、必然的に競売に対する注目度が増しているという寸法。  不動産を扱う業者は“止まると死んでしまうサメ”に例えられるほど、買って売ってを絶え間なく繰り返さないと事業を回していけないところがあり、常に不動産を求めているのだ。
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任意売却業者に任せるとどうなるのか
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