Twitter代替と言われたマストドンの今。多様性を保つ脱中央集権的SNSの魅力は今も

 friends.nicoはサービスを終了しました

friends.nicoで表示される画面

ドワンゴのSNS「friends.nico」が4月28日に終了

 ドワンゴのSNS「friends.nico」が4月28日に終了した。トップページからは「卒業証書」というpdfへのリンクが張られた状態になっている。 「friends.nico」は、マストドン(Mastodon)と呼ばれる分散型SNSの1つである。TwitterやFacebookといったSNSは中央集権型だ。そうした中央集権型ではないマストドンは、2016年10月に誕生して2017年4月に日本でブームが起きた。  分散型のマストドンでは、自由にサーバーを立てることができる。草の根のサーバーだけでなく、ドワンゴやピクシブといった著名なIT企業が参入してサーバーを作った。それから2年、多くのユーザーを抱えていた「friends.nico」が終了した。そこで、マストドンについて振り返りながら、現状を確認してみたいと思う。

マストドンとは?

 マストドンは、2016年にドイツのプログラマー オイゲン・ロホコが開発したフリーソフトウェアだ(フリーソフトウェアは、自由なソフトウェアという意味で、無償のソフトウェアという意味ではない)。  マストドンを利用すれば、自身でサーバーを立ち上げて、Twitterのようなサービスを提供できる。また、各サーバーは、連合を作ることで発言を共有できる。運営者は、政治、趣味など自由な方針で運営をおこなえる。ユーザーはそうしたサーバーの中から、自分が参加したいものを選ぶ。複数のマストドンにアカウントを作ってもよい。  TwitterなどのSNSが、強力な統治者がいる中央集権型のサービスだとするならば、マストドンは、都市国家ポリスが並立するギリシア時代のようなサービスだ。アテネやスパルタといった特徴的な都市国家があり、それらが緩い繋がりを持っている。古代のギリシアと違うのは、ユーザーが自由にどの国に属するかを決められることだ。  マストドンは脱中央集権で、オープン(オープンソースかつオープンな仕様)のSNSだ。Twitterなどでは、運営の方針に合わない発言は禁止される。マストドンでは、禁止されれば他のサーバーに移ればよい。自分でサーバーを立ち上げることもできる。プログラムは公開されており、改造が許可されているので、独自の機能を持たせることも可能だ。  独自のサーバーを立ち上げた際、世間から孤立するのではないかという懸念もあるだろう。マストドンには連合という仕組みがある。サーバー間で繋がり、発言を共有することができる。どのサーバーと繋がるかは、運営者が自由に選べる。この仕組みを持つことで、完全な孤立を避けることが可能だ。内政干渉を防ぎながら、他のサーバーと交流を維持する。そうした仕組みをマストドンは持っている。  Twitterの代替と言われたマストドンだが、単なる代替ではない。Twitterに代表される商用SNSとは思想が違う。ソフトウェアは思想の一表現である。マストドンは、現在の中央集権的なWebの世界に一石を投じたソフトウェアである。
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2017年のブーム鎮静後はどうなっていた?
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