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マイクロソフトが「Microsoft Edge」を「Chromium」ベースに
4月の上旬にマイクロソフトが、「Chromium」をベースにした「Microsoft Edge」のプレビュー版を公開した。
Web業界では大きな話題だったが、そうでない業界の人には、このニュースはいまいちピンと来なかったと思う。そこで、令和のWebブラウザ事情として、「Microsoft Edge」が「Chromium」ベースになるということは、どういうことなのかを解説する。
まず、「Chromium」が何なのか知らない人の方が多いだろう。
普段、私たちが利用しているWebブラウザは、複数の部品が統合されたソフトウェアだ。ブックマークなどの機能は、Webブラウザの外側を覆う”ガワ”の部分になる。それとは別に、HTMLファイルを適切なレイアウトで表示する「HTMLレンダリングエンジン」、JavaScriptを実行する「JavaScript実行エンジン」がある。それらが合わさって、Webブラウザはひとつのソフトウェアになっている。
「Chromium」は、オープンソースのWebブラウザだ。HTMLレンダリングエンジンは「Blink」で、JavaScript実行エンジンは「V8」になる。「Google Chrome」は、この「Chromium」を元にして開発されている。逆に言うならば、「Google Chrome」からGoogle固有の機能を抜いたものが「Chromium」と呼べる。実際に「Google Chrome」と「Chromium」は複雑に絡み合っている。
「Microsoft Edge」が「Chromium」ベースになるということは、その中身が「Google Chrome」とほぼ同じになるということだ。このことは、マイクロソフトがWebブラウザを独自開発することに、白旗をあげたことを意味する。
往時には、「Internet Explorer」で覇権を取っていたマイクロソフトが、Googleに屈服したということだ。そのため、Web業界では大きな注目を浴びた。
Webブラウザの中身は、現状3つの大きな潮流がある。
1つ目は「Mozilla FireFox」の潮流だ。HTMLレンダリングエンジンは「Gecko」、JavaScript実行エンジンは「SpiderMonkey」。「FireFox」は、後継のHTMLレンダリングエンジン「Servo」を開発しており、今後はこちらに移行する。
2つ目は「Internet Explorer」の潮流だ。HTMLレンダリングエンジンは「Trident」、JavaScript実行エンジンは「Chakra」。マイクロソフトはIEの後継として「Edge」を送り出しており、こちらではHTMLレンダリングエンジンは「EdgeHTML」、JavaScript実行エンジンは「ChakraCore」となっている。「Chromium」への移行が完了すれば、中身は「Blink」「V8」のセットになる。
3つ目は「WebKit」の潮流である。前身は「KHTML」。「WebKit」はアップルが中心になって開発され、「Safari」に用いられている。オープンソースのHTMLレンダリングエンジンで、「KHTML」当時のJavaScript実行エンジンは「KJS」、「WebKit」時のJavaScript実行エンジンは「JavaScriptCore」となっている。
「WebKit」は、初期の「Google Chrome」にも採用されていた。ただし、JavaScript実行エンジンは、Google謹製の「V8」となっている。その後、より自社に有利な開発を目指して、Googleは「WebKit」から派生させて「Blink」を作った。
「Microsoft Edge」が「Chromium」ベースになることで、2つ目の潮流が絶えることになる。その結果、「WebKit」系以外のWebブラウザの潮流は「Mozilla FireFox」のみになる。
「Mozilla FireFox」は、シェア的に厳しい戦いを続けており、この流れが途絶えると、世の中の主要なWebブラウザの系統は、「WebKit」系のみになってしまう。