大使館も本人と認めるスリランカ人を「他人」だとして収容する日本。このままでは生涯収容の可能性も!?

取引を持ちかけてきた日本人に監禁され、入管に連行

 ダヌカさんは帰国後に会社を設立し、貿易業務に携わった。2009年、ダヌカさんは日本で知り合った日本人K氏から「知人のヤマモト・ヒロシがスリランカとの貿易をやりたがっている。取引しないか」との誘いを受ける。そして、ヤマモトと電話やメールで半年間に及ぶ商談を行い、実際の輸出に向けてスリランカ国営の医薬品製造会社から健康食品を扱う契約を結んだ。  ところがその直後、ヤマモトは「事業費が足りない。当社に500万円を投資してほしい」との不自然な要請を寄せてきた。怪しい。ダヌカさんは、ヤマモトの会社の実態を確認しようと、2010年11月4日に再来日。このときは、「もう違法行為はしない」との意思で、本人名義の正式なパスポートと90日間のビザを携え入国した。  ヤマモトは、成田空港からダヌカさんを千葉県八千代市の某マンションへと案内したが、すぐに判ったのは、ヤマモトの会社が詐欺目的のペーパーカンパニーだったことだ。ヤマモトはダヌカさんを3週間そこに軟禁し「投資しろ」と強要し続けたのだ。  そして11月25日、その場所に入管と千葉県警の職員が訪れ、ダヌカさんは、警察署と東京入国管理局(以下、東京入管。東京都港区)へと連行された。  なぜ、こんなことが起こるのか。ダヌカさんはこう推測する。 「ヤマモトは何が何でも私のカネがほしかった。だから私の過去を知ったうえで私を入管に売った。ヤマモトは、私が収容されているときも面会に来て『釈放するには金が要る。あなたのお金を私に任せれば、ここから出してあげる』と言ったんです」  ダヌカさんはその話には乗らなかった。しかしここで問題となるのは、指紋を照合すると、日本政府にしてみればそこにいるのはかつて強制送還されたP氏だ。警察にも入管も「P氏がダヌカ名義のパスポートで入国した」と認識したわけだ。

入管は「裁判終了後に帰国できる」と言っていたが、懲役2年の実刑判決に

 入管は取り調べのあとでこう告げたという。 「Pの名前でスリランカ大使館に一時帰国用パスポートを発行してもらえば、帰国できる」  帰るしかないと思ったダヌカさんは、他人名義でのパスポート申込書を作成したが、入管はその後「帰国するには、裁判を受ける必要がある。裁判終了後に帰国できる」と説明した。  そして、その指示通りに裁判を受けたダヌカさんに待っていたのは、出入国管理法違反での懲役2年の実刑だった。横浜刑務所で服役するが、2013年3月の出所時にはとっくに在留資格が失われていたために、ダヌカさんは即時に東京入管に収容される。そして8か月後の11月に仮放免される。  仮放免とは、社会のなかで生活できるが、「在留資格」がないから母国送還が前提とされる状態をいう。「就労禁止」と「移動の制限」が条件で、有効期限が1~2か月だけなので、仮放免者は1~2か月おきに東京入管で更新手続きをとらねばならない。
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スリランカ政府もダヌカさん本人だと証明しているのに……
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