児童相談所の一時保護は本当に「救済」なのか? 定員オーバーや職員による虐待も

児童相談所を増やしても、虐待が減るわけではない

 今年2月19日、安倍総理は総理大臣官邸で政府与党連絡会議に出席し、こう発言した。 「8日に関係閣僚会議を開催し、全ての虐待ケースの1か月以内の緊急安全確認や、現在3000名の児童福祉司を来年度一気に1000名増員し、2022年度には5000名体制とするなど、児童相談所の体制の抜本的強化に直ちに取り組むよう指示しました」  職員を増やせば、相談窓口も増えることになる。  窓口が増えれば、これまでと同様、相談件数も増えるだろう。  前述のように、施設のようなハコモノはすぐには新設できないため、定員オーバーの課題はますます深刻化し、子どもは従来と変わらず、さんざん虐待された後でないと保護されない。  保護されても、施設内でまた虐待されかねない。  これが「抜本的」な虐待防止対策といえるだろうか?  政府はこれまでも職員や施設を増やし、虐待通告ダイヤル189の広報にも努めてきたが、その分だけ相談件数は増えるばかりだった。これは、実際の発生件数が相談件数よりはるかに多いことを示唆している。つまり、現行制度のままでは、相談ばかりが増えて、虐待の発生自体は減らせないのだ。  児童相談所ができる業務は、あくまでも「さんざん虐待された後のケア」にすぎない。ケアに金をかけるのも大事だが、そもそも子どもが親に虐待されない仕組みを作るのが、最優先課題ではないか? <文/今一生> フリーライター&書籍編集者。 1997年、『日本一醜い親への手紙』3部作をCreate Media名義で企画・編集し、「アダルトチルドレン」ブームを牽引。1999年、被虐待児童とDV妻が経済的かつ合法的に自立できる本『完全家出マニュアル』を発表。そこで造語した「プチ家出」は流行語に。 その後、社会的課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスの取材を続け、2007年に東京大学で自主ゼミの講師に招かれる。2011年3月11日以後は、日本財団など全国各地でソーシャルデザインに関する講演を精力的に行う。 著書に、『よのなかを変える技術14歳からのソーシャルデザイン入門』(河出書房新社)など多数。最新刊は、『日本一醜い親への手紙そんな親なら捨てちゃえば?』(dZERO)。blog:今一生のブログ
フリーライター&書籍編集者。 1997年、『日本一醜い親への手紙』3部作をCreate Media名義で企画・編集し、「アダルトチルドレン」ブームを牽引。1999年、被虐待児童とDV妻が経済的かつ合法的に自立できる本『完全家出マニュアル』を発表。そこで造語した「プチ家出」は流行語に。 その後、社会的課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスの取材を続け、2007年に東京大学で自主ゼミの講師に招かれる。2011年3月11日以後は、日本財団など全国各地でソーシャルデザインに関する講演を精力的に行う。 著書に、『よのなかを変える技術14歳からのソーシャルデザイン入門』(河出書房新社)など多数。最新刊は、『日本一醜い親への手紙そんな親なら捨てちゃえば?』(dZERO)。
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